もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「紙の月」を読みました

エアコンは要らないけれど、扇風機はブンブン回す。

そんなお昼です。🌞

 

紙の月 (ハルキ文庫)

「紙の月」(角田光代 著)を読みました。

ドラマや映画になったので、知っているかたも多いでしょう。

 

主人公の梅澤梨花(うめざわりか)は、

「1986年、25歳のときに、2歳年上の梅澤正文と結婚した」

と文中にあるので、私より2歳年上、ほぼ同世代だ。

1994年、バブル崩壊間もない頃、

その梨花が、勤め先の銀行で1億を超える横領を行い、

東南アジアのタイへ逃げてきたところから物語は始まる。

1億もの大金をどうして(方法・目的)横領したのか。

梨花の半生は、単なる“お金を使うのではなくお金に使われてしまった

女性の話”を超えて、日常と非日常の境のあいまいさを

浮かび上がらせる。

 

私が結婚したのは1990年。

当時夫婦共に働いていて、今から思えば一番経済的に潤っていた。

一番景気のいい時に結婚して、そこから沼にハマるように

収入が減っていった。バブル崩壊だった。

あの頃を生きていた私たちが、何を考えていたか、

どんな未来を描いていたか、そんなことを思い出していた。

あれから、震災もあって、リーマンショックもあって、

このコロナ禍。

まあよく生きて延びてきたなと不思議にさえ思う。

 

散財するとちょっとした開放感があるのはわかる。

贅沢をするとやっぱりいい気分だ。

でも、それを続けるうちに、その開放感やいい気分は

味わえなくなるだろう予感がある。

梨花の逃亡までのヒリヒリした時間は、

心臓がひとつでは足りないくらい(?)

 

梨花の話と並行して、梨花と過去関わりがあった

3人の人物の話が描かれる。

この構成がうまいなと思った。

性格も生い立ちも全然違うが、過去に梨花を知る人物として

横領をした梨花に思いを馳せている。

梨花の別の一面がわかると同時に、

3人それぞれが「お金」の問題を抱えていることがわかる。

 

タイトルにある「月」はところどころで登場する。

でも、満月はなかった。

切り捨てた爪のような細長い月だ。

空を裂いたような月も。

しかし、最後の場面、

店を出る。ネオンで夜空は薄明るい。淡い色の夜空に

月も星も出ていない。

(「紙の月」より)

もう月は出ていないのだった。