「傲慢と善良」(辻村深月 著)を読みました。
表紙イラストは雪下まゆさんで、本の表紙でよく見かけるイラストレーターです。
図書館の予約が回ってくるのを待ちきれないので購入しました。
タイトルを見てすぐに、ジェイン・オースティンの『自負と偏見』(または『高慢と偏見』)を思い出した。語感も似ている。
婚活がテーマだという。それも似ている。
読み進めると、本当に『自負と偏見』がセリフの中に出てきた。そうか、この小説は現代版『自負と偏見』なのかーとその時は思った。
物語の主人公は、婚約中の西澤架(にしざわかける)と坂庭真実(さかにわまみ)。
39歳と35歳のカップルで、互いに「かけるくん」「まみちゃん」と呼び合う。初めはこの設定に違和感を感じたが、結果的には絶妙だったと思う。
結婚を控え、仕事を辞め送別会に参加し帰宅した真実が翌日姿を消した。(二人は既に同居している)途方に暮れた架は、知り合う前の真実の過去を訪ねて、真実の故郷 群馬へ赴く。
二部構成で、前半(分量としては3分の2)は架が真実を探す部分。後半は、姿を消していた真実の現状が描かれる。
架の部分では、何度もうーん(+o+)と頭を抱えた。もう、ええって。それ以上言わなくても・・・言ったかぁ~というようなことが何度もある。その度に鋭い針でグサグサと胸を刺される。
婚活をテーマにしているが、人生に何度かある“選択”に通じることだ。受験や就職、転職、広い意味では友人とのつき合いもそうだろう。
自分の価値、相手の価値を当たり前のように決めて判断しているが、その怖さと脆さを感じさせられた。
私はお見合い結婚なので、主人公たちの婚活を通して自分の結婚時のゴタゴタ(!)を思い出した。はっきり言ってもう思い出したくなかった。あのゴタゴタを乗り越えるには多少傲慢でなければ無理だったろうとさえ思う。
しかし。
乗り越えても、まだそこはスタートだったのだ。
“選択”は常にスタート。何が起こるかわからない。相手は未知なのだから、ある程度の謙虚さは必要だろう。
でも、これから結婚する人たちには、多少傲慢であっても勇気を持ってほしいなと思う。未知との遭遇は本来わくわくするものなのだから。
辻村作品、朝井リョウさんのあとがきを読んで、『琥珀の夏』を予約した。他にも。
楽しみだ。