晴れ間ものぞきましたが、ほぼ一日曇っていました。明日からは本格的に降りそうです。☔
![白い僧院の殺人【新訳版】 (創元推理文庫) 白い僧院の殺人【新訳版】 (創元推理文庫)](https://m.media-amazon.com/images/I/51-mcn9CM4L._SL500_.jpg)
「白い僧院の殺人」(カーター・ディクスン 著/高沢治 訳)を読みました。
ここ2~3年は海外の作品を(特にミステリー)をよく読むようになりましたが、昔はカタカナの固有名詞や翻訳調に慣れず、ほとんど読みませんでした。ミステリーもドイルのホームズものや、クリスティーのポアロくらいで。ここらできちんと“巨匠”と呼ばれる作家の作品も読んどかないと・・・ということで、「密室もの おすすめ」と検索して海外作品、日本の作品とで読みたい本をリストアップしました。(安易な方法💦)
日本の作品はほぼ読んでいたので、やっぱり海外作品から。まずは、カーのこの作品を選びました。
カーの作品と書きましたが、ジョン・ディクスン・カーが本名。非常に多くの作品を残しています。私も名前は知っていましたが、読んだのは初めて。ミステリーファンからは「モグリか!」と言われてしまいますね(笑)
マイ本棚にも「ユダの窓」(カーター・ディクスン名義)と「皇帝のかぎ煙草入れ」(ジョン・ディクスン・カー名義)がありますが、両方とも未読💧 今後がんばります(^^ゞ
「白い僧院の殺人」はヘンリ・メリヴェール卿が探偵役の2作目で、カーター・ディクスン名義で出されています。本当は1作目の「黒死荘の殺人」から読むべきなんですが、それはまた今後に・・・(いつになるやら)
物語は、外交官のジェームズ・ベネット青年が“ある不安”を抱えて、伯父のヘンリ・メリヴェール卿(文中ではH・Mと表記される)を訪ねるところから始まる。本当にいきなり始まるので、H・Mは何をして暮らしているのか、過去は何をしていたのかよくわからない。おそらく1作目にその説明があるのだろう(ちょっと後悔) 弁護士と医者の資格をもっているとは書いてあった。
H・Mはずいぶん偉そうな初老の男性というイメージだ。はるばるアメリカからロンドンにやってきた甥を、あまりうれしそうに迎えないし、大体初対面だというのに、「会いたかったよ」の一言もない。社交辞令いっさいなしだが、嘘はない。事件の探偵役としては向いているのかな。
さて、伯父に「心配ない」と言われたベネット青年は、ロンドン近郊のサリー州エプソムにある屋敷「白い僧院」に向かうが、その別館でハリウッド女優マーシャ・テイトの遺体に遭遇してしまう・・・
密室ものを取り上げるのだから、どんな密室かは書いておこう。
亡くなった女優がいた「白い僧院」の別館の周囲は池で、季節は冬。(クリスマスシーズン)薄い氷が張りその上に雪が降り積もっている。ベネットが到着した時、雪の上に玄関に向かう足跡が一組ついていた。跡がついてからそう時間は経っていないように見られた。ドアから現れたのは、屋敷の当主の弟ジョン。中の寝室でマーシャが頭を殴られて死んでいた。
この状況では、ジョンが犯人だと思われるが、マーシャが亡くなった時間はベネットが発見する2時間以上前だとわかる。雪が降り続いていたので、足跡の深さが合わない。
雪に閉ざされた密室といえるだろう。
シンプルだけど、美しさを感じるくらいきれいに閉じている本格もの。これが最終的な感想だ。以降に現れる数々の密室もの(足跡のない殺人)の礎のなったことが納得できる。トリックの仕掛けや謎解きの部分だけでなく、登場人物の描き方や舞台設定、読者の感情移入も考えられているのがすごい。
犯罪を描きながら、きちんと人間を描いている。作者は最後に、H・Mに「人間の悲劇じゃな。あれは本当に一個の人間の悲劇だった」と言わせているが、ミステリーの本質なのかなと思う。
ベネット青年のロマンスの行方が興味深く、ラブコメ風のシーンには心が和んだ。偉そうなオジサンのイメージだったH・Mも、「意外にいいヤツなのね」と思わせて終わった。憎いよ、カー!
次に読む作品はまだ決めていない。図書館で面白そうな本を見つけたので、浮気するかも。