「初秋」(ロバート・B・パーカー 著/菊池光 訳)を読みました。
先に読んだ「捜索者」の訳者 北野寿美枝氏があとがきで紹介されていたので、図書館で借りてきました。古い本で奥付を見ると昭和61年の発行です。確かに時代的な古さは否めませんが、主人公が人間に向ける温かさには何となく懐かしさを覚えました。
冗談の応酬にもみえる会話の中に、ピリッと効いた気障なセリフがあり、こんな年齢になってもキュンとします。
最後の方で、危険に立ち向かう主人公スペンサーに向かって恋人のスーザンがこう言います。
「(前略)あなたはポールのことも考えなければならないのよ(中略)それに、わたしのことも」
(「初秋」より)
それにスペンサーはこう答えます。
「汝に対する我が愛は果てしなく、愛されることは至福の光栄」
(「初秋」より)
ひょ~~!
私立探偵のスペンサーは、離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしいという女性の依頼を受ける。当の息子ポールは夫の元にいたが、夫のそばには愛人もいた。
妻側にも愛人がおり、ポールは元夫婦の駆け引き材料になっていることがわかる。
相棒ホークや恋人のスーザンの心配をよそに、スペンサーはポールとの共同生活を始めるのだった・・・
この共同生活の様子が、「捜索者」とよく似ている部分だ。スペンサーとポールは森の中に小屋を建てる。庭でトレーニングをし、山の中を走る。休日には町で買い物をする。
どんな質問にも「わからない」と答え、首をすくめるだけだった15歳のポールが、おせっかいなスペンサーの元でどのように変化していくかが読みどころだ。
「初秋」(原題:Early Autumn)は、物語が1月から始まり初秋に終わることと、思春期のポールが親や大人に頼らず自立する人生の初秋に向かっていくことを表していると思う。
ハードボイルドなので銃撃戦🔫のシーンもあったが、かなり薄め。ハードボイルドファンには物足りないかもしれない。
私はどちらかといえば苦手なジャンルだが、このスペンサーを主人公としたものはシリーズになっているし、もう1作だけ読んでみようと思っている。