桜が満開になりました。🌸
造幣局の通り抜けも始まったし、きっと桜の名所はすごい人出でしょうね。
私は近所の桜を見たくらいですが、それでも十分楽しめました。
これから桜前線は北上。暑くなる前の心地よい季節をたっぷり味わいたいですね。
「捜索者」(タナ・フレンチ 著/北野寿美枝 訳)を読みました。
文庫で670ページ。昨年かに購入した本で、なかなかの分厚さだったが、一気に読めた。
舞台はアイルランド西部の小さな村。主人公のカル(カルヴィン・フーパー)は、シカゴ警察を辞め、妻とも離婚し、移住してきた48歳の男。売りに出されていた廃屋を買い、修繕に精を出す日々を送っている。
そこへ、トレイと名乗る地元の子どもがやってくる。カルに用があるようだが、なかなか心を開かない。大工仕事を手伝わせながら心を通わせようとするカル。
やがて、トレイが「失踪した兄の行方を捜してほしい」とカルに打ち明ける。現役ではないものの、カルは“捜索”を始めるが・・・
まずは、舞台となるアイルランドの村の情景描写が素晴らしい。
濃厚な空気は、ただ吸い込むだけでは物足りない。フルーツケーキを見るとにおいを嗅ぐだけではなくひと口かじりたくなるのと同じように。この空気を両手ですくい取って、顔にこすりつけたくなる。
(「捜索者」より)
これなんかは情景を表してるわけじゃないが、漂う空気やにおいがどんなだろうとわくわくさせる。
カルの買った廃屋の近くには、ミヤマガラスが群れ、ウサギが巣を作っている。風や木々の出す音が常にある。隣人のマートは羊農家だ。
久しぶりに絵を描いてみたいと思った情景だった。
日本でも移住ブームだと言われているが、田舎の濃厚なコミュニティに入っていくのは思ったより難しいそうだ。
違う国で静かに暮らしたいと願って移住してきたカルも、真反対のハードな日々を送ることになってしまう。
ハードボイルドテイストは得意ではなかったが、トレイの存在がそれを薄めている。
訳者の北野氏があとがきで「思い起こした」という、ロバート・B・パーカーの「初秋」を図書館で借りてきた。次はこれを読もうと思う。こちらは正真正銘のハードボイルドみたい💦