もりっちゃんのゆるブログ

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「厳寒の町」を読みました

相変わらず調子が上がらず、ご無沙汰してしまいました。

しばらく落ち着いていた不眠が、ここのところ復活してきて、その影響で日中ぼーっとしてしまいます・・・

今日は結構元気💪 あせらずぼちぼちで行きます(^^)/

 

厳寒の町 エーレンデュル捜査官シリーズ (創元推理文庫)

「厳寒の町」(アーナルデュル・インドリダソン 著/柳沢由実子 訳)を読みました。

アイスランドを舞台にした犯罪捜査官エーレンデュルのシリーズ、第5弾です。

 

季節は1月。雪と氷に覆われ、アイスランドで一番厳しい季節だ。

犠牲者は10歳の男の子。学校帰りにナイフで襲われたとみられる。男の子はアイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた“移民の子”だった。

前作はアイスランドの歴史、今回は移民問題と、作者はセンシティヴな問題を積極的に取り上げている。日本ではまだ“移民”の認識は薄いかもしれないが、観光客ではない、日本で暮らす外国人を目にする機会はうんと増えたように思う。人口が減少していくことが予想できるなか、避けては通れない問題ではないかと感じた。

 

“移民の子”が殺されたことで、移民政策に反感を持っている者の仕業ではないかと思われた。子どもの通う学校の先生、生徒、近所の住人、友人たち、その家族、そのそれぞれに移民に対する考え方があり、捜査は難航する・・・

 

シリーズものでは、登場人物の状況の変化も楽しみのひとつだが、今回は主人公エーレンデュルの元上司、マリオン・ブリームが死を迎える。(あ、これネタバレか💦)

前作からずっと病の床にあったので、エーレンデュルも読む方も覚悟ができていた。

そのシーンが印象的だったので引用しておく。

部屋は深い沈黙に包まれていた。冬の夕闇が町を覆い、きらきら光る真珠がちりばめられたような光の港に変えていた。エーレンデュルは病院の裏側に面した窓の前に立っていた。大きな窓ガラスは物悲しい絵のようで、彼らの寂しい最期の別れを映していた。

(「厳寒の町」より)

一生独身だったマリオンの最期に立ち会ったのは部下だったエーレンデュルだけだった。エーレンデュルは自分もマリオンと同じように孤独な最期を迎えるのではないかと思うのだった。

もう二度とマリオンには会えない。残っているのは記憶だけ、それも愉快なものばかりではなかった。そして、自分自身の残りの人生のことを思った。次の世代の連中がいとも簡単に引き継いでいくのだろうと思った。自分の時代など、よくわからないうちに終わってしまっている。仕事以外のことにはまったく関知しなかった自分の人生。あれよあれよという間に自分はきっとマリオンと同じように病室に横たわり、死が近づくのを待つようになるのだろう。

(「厳寒の町」より)

年齢のせいだと思うが、人生の終わりを表した部分に心が寄ってしまうことが最近多い。

 

事件の犯人は、移民問題が理由で、つまり男の子が“移民の子”だったからという理由で殺したわけではなかった。しかし、その理由や背景には暗澹たる気持ちになる。こっちのほうが結構きつかった。

 

原題はアイスランド語で“冬”の意。辛く厳しい冬をひたすら耐えて過ごす人々を思った。

次作は「印」。現時点で邦訳されている最後の巻になる。これを読んで、エーレンデュルとはしばしのお別れになりそうだ。