「夏と花火と私の死体」(乙一(おついち) 著)を読みました。
道尾秀介氏の「向日葵の咲かない夏」と同じような世界観だと
息子に紹介され読みました。
こちらは正真正銘、ホラー小説です。
この物語の語りは、小学3年生の五月という名の「わたし」。
「わたし」は冒頭まもなく殺されてしまうが、「わたし」の
語りはその先も続いていく。
「わたし」の殺害に関わる兄妹、橘 健と弥生が「わたし」の死体を
隠そうと試みる4日間の話だ。
「わたし」である五月はとうに死んでいるのに、
五月の魂が語っているのかと最初は思うのだが、
なんだか変な感じなのだ。
死ぬ瞬間はこんなふうに描写されている。
わたしはバランスを崩してそのまま枝から滑り落ちる。
まるでスローモーションのように周りの景色がゆっくりと
上に流れ去る。いましがた登ってきた何本もの枝を
ぱきぱきと折りながら、わたしは止まらずに落ちていく。
一本の枝にしたたか体をぶつけ、自分の潰れる音が
聞こえる。変な方向に体がねじ曲がり、声にならない
叫びを吐き出しながら、わたしはさらに落ちる。
空中で、お気に入りのサンダルが片方脱げたのがとても悲しい。
(「夏と花火と私の死体」より)
すごい表現だと思いました。
この作品は乙一氏のデビュー作で、第6回ジャンプ小説・ノンフィクション
大賞を受賞しました。
当時乙一氏は17歳。
ホラー小説界では話題になりました。
小学生の子どもが主人公だという点は、確かに「向日葵~」と
同じだが、この作品はホラーの要素が満載なので、まだ
落ち着いて怖がれる? というと変だがある意味安心できるのだ。
「向日葵の咲かない夏」」のほうがインパクトがあったと
息子に伝えると、
「年をとって感性が鈍くなってる」と言われました Σ( ̄ロ ̄lll)
はいはい、そうですよ。
「わたし」の死体は4日目にどうなるのか。
見つかってしまうのか。
最後までひやひやしながらページをめくり、最後はホラーど真ん中。
作品自体は短編なのですぐ読めます。