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「炎の爪痕」を読みました

炎の爪痕 ペレス警部シリーズ (創元推理文庫)

「炎の爪痕」(アン・クリーヴス 著/玉木亨 訳)を読みました。

 

「水の葬送」「空の幻像」「地の告発」に続く“新シェトランド4部作”の最終巻です。

ジミー・ペレス警部が主人公のシリーズ“シェトランド四重奏”から数えると、8作目、

シリーズとしても最終巻になりました。

作者のアン・クリーヴスは夫のティムと出会ったシェトランドの物語を愛していましたが、夫が亡くなったことでこのシリーズを終えることにしたそうです。

「人口の少ないシェトランドで、あまりにも多くの人を殺してしまったから・・・」と冗談で答えたアン・クリーヴスだそうですが、物語の終わり方としてもちょうどよかった気がします。

 

ペレス警部の自宅を訪れたのは、シェトランド本島に一家で移住してきたヘレナ。彼女はまえの持ち主が納屋で自殺して以降、何者かが家に侵入して謎めいた紙片を残していくことに悩まされていた。その納屋で、今度は近所の家の子守りが死体で見つかり、ペレスが捜査担当者となるのだがー

(「炎の爪痕」作品紹介より)

 

ヘレナ・フレミングは著名なファッションデザイナー。一家は夫のダニエル、息子のクリストファー、娘のエリーの4人。

近所に住むモンクリーフ家は、ロバート、ベル夫婦と長女のマーサ、長男チャーリー、次男のサム、次女のケイトの6人家族で、殺されたエマはこの家の住み込みの子守りだった。

このふた家族を中心に物語は進んでいく。

殺されたエマという女性が、いつまでたっても謎のままだ。エマは自身の過去だけでなく現在も周りに秘密にしていた。その秘密を知っていた者がキーマンとなる。

 

ヘレナの息子、クリストファーは自閉症で、火(や炎)にこだわりをもっている。そのこだわりは、彼にとっては安らぎや落ち着きをもたらすもので、他意はない。しかし、他人にとっては恐怖を感じるもので、彼ら一家が移住者であることもあり、周りから嫌がらせを受けたりもしていた。

シェトランドに限らず、そして島に限らず、狭いコミュニティでは起こりやすいことだ。

他者を理解する、と言葉で言うのはたやすい。しかし何と難しいことだろう。

ただ、理解しないまま排除するようなことだけはやめたいと思う。

 

頼りなかった部下のサンディも、幼なじみのルイーザと結婚が決まる。

そしてペレスは・・・

皆、新たな旅立ちというところか。

 

「水」「空気」「地」「火」はギリシア哲学で万物の根源とされた四元素と言われています。

シリーズ物の共通項を考えるのも、この8部作では楽しみの一つでした。

では、シェトランドの地に別れを告げて。

楽しい物語をありがとうございました。