「地の告発」(アン・クリーヴス 著/玉木亨 訳)を読みました。
“シェトランド四重奏”に続く4部作の3作目。
「水(の葬送)」、「空(の幻像)」ときて、「地」です。
前シリーズ“シェトランド四重奏”の1作目「大鴉の啼く冬」に登場した(というか犯人と疑われた)老人マグナスが病気で亡くなり、ペレス警部が葬儀に参列する場面から、物語は始まる。
「大鴉~」の読者なら、ペレス警部とのちの恋人フランとの出会いを思い出すことだろう。あの頃、フランの娘キャシーはまだ幼かったが、今やなかなか生意気な口をきくようになっている。時は、どんな大きな出来事にも悲しみにもとどまることなく、同じペースで先に進むのだなあとしみじみ思う。
季節は2月。
その葬儀の最中、長雨のせいで大規模な地滑りが起こり、墓地と1軒の空き家が流され、その現場から女性の遺体が発見される。女性は地滑りの前に既に殺されていたことがわかりー
道路から見ると、とてもシェトランドの景色とは思えなかった。サンディが子供の頃から慣れ親しんできたシェトランドとはーー羊のいる丘と泥炭の斜面からなるシェトランドとはーーまったくちがっていた。人工的な光のなかに大型機械が浮かびあがっているところは、工業地帯を連想させた。
(「地の告発」より)
本筋の謎解きとは別に気になった登場人物がいた。アルコール依存症の過去を持つ、ジェーンという女性だ。断酒会に参加し依存症を克服、その後も断酒会でその経験を話し、依存症に苦しむ人の相談にのっている。
依存症を克服しても、彼女の過去は変わらず、そのことは彼女を苦しめる。ジェーンの家族も影響を受けており、シェトランドのような狭い世界では他人にも秘密にできない。
アンディは肩をすくめ、しばらく考えてからこたえた。「みんな、シェトランドに秘密はないと考えている。でも、それは間違いです。誰もが秘密をもっている。それが正気を保つ唯一の方法だから」
(「地の告発」より)
(註:アンディはジェーンの長男)
ジェーン一家は危機にあったが、きっと事件後いい方向へ向かうのではないかなと思われた。そうあってほしい。
ペレス警部とウィローとの関係は今回新しい段階に進む。
うーん、家族の形はどうなるのか。ペレス警部は“だらしない男前”(笑)という設定なのだが、こういう男性にしっかりしたきっぷのいい女性は惹かれてしまうのしらん・・・
とにもかくにも、次作が本当の最終巻。
シェトランドの物語を味わい尽くしたいと思っています。