もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「大鴉の啼く冬」を読みました

どうも調子が出ません・・・

口の端っこに水ぶくれができて痛いです(>_<) ヘルペスというやつ。

昔から体調がイマイチのときによくなるので、ちょっとゆっくりしなさいよというサインかなと思っています。

あくびをするとピキッと切れて痛い!

 

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

「大鴉の啼く冬」(アン・クリーヴス 著/玉木亨 訳)を読みました。

大鴉は“おおがらす”と読みます。

「哀惜」の作者アン・クリーヴスの“シェトランド四重奏”と呼ばれるシリーズの第1弾。

「哀惜」の記事はこちら。 ↓

moricchan24.hatenablog.com

 

舞台となるシェトランドは、イングランド本島の北、北海に浮かぶ島々。

北緯60度、緯度的にはアンカレッジやヘルシンキとほぼ同じ、スコットランドアバディーンからもノルウェーのベルゲンからもフェリーで14時間かかるーと川出正樹氏の解説にある。

このシェトランドの架空の町レイヴンズウィックで事件が起こる設定になっている。

同じ島とはいえ、日本のように人口が多くなく、町の住人のことをすべての住人が知っているという閉鎖的な環境で事件が起こると、根拠のない噂が事実として伝わっていく。

新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人マグナスを深夜に訪れた黒髪の少女キャサリンは、4日後の朝、大鴉の舞い飛ぶ雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。住人の誰もが顔見知りの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか? 8年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは?

東京創元社ホームページより)

ストーリーは、死亡した少女キャサリンを発見したミセス・フラン、キャサリンの友人サリー、8年前の事件との類似点から疑われる老人マグナス、事件を捜査する地元警察のペレス警部の4人の視点で描かれ、進んでゆく。一人の視点では見えている現実に限界があるのだと自然に気づく。

事件は解決し、犯人は逮捕されるが、なんとも悲しく淋しい読後感だ。

 

ミセス・フランが丘から海を眺めるシーン。

彼女の注意をひいたのは、その色彩だった。シェトランドでは、たいていの色がくすんでいた。緑がかったオリーブ色、こげ茶色、どんよりとした灰色。それらすべてが、霧でぼやけているのだ。だが、早朝のさんさんと降りそそぐ陽光のなかで、目のまえの光景はくっきりと色鮮やかに浮かびあがっていた。まぶしいくらい白い雪。そこに映える三つの影。大鴉だ。

(「大鴉の啼く冬」より)

画家であるフランはその美しさに惹かれるのだが、この直後、キャサリンの亡骸を発見するのだった。

美しさの裏側にある残酷。この物語を象徴する場面だと思う。

 

容疑者として疑われるマグナスは、ケガをした大鴉を世話し、飼っている。人間のことばを話すほどなついている。マグナスは逮捕されたとき、大鴉の世話をペレス警部に頼むが、環境が変わった大鴉は死んでしまう。

 

原題は“RAVEN BLACK”。ravenは日本でワタリガラスのこと。北海道で見られる渡り鳥のカラスだ。

日本語に“烏の濡れ羽色”ということばがある。水に濡れた烏の羽のように、黒くてつやつやした色で、黒髪の形容によく使われる。物語に登場する大鴉の黒色とともに、少女キャサリンのきらきら光るブルーの筋が入った黒髪を連想させる。

 

シェトランドの厳しい冬の物語。ミステリーだけど、抒情性に富んだ小説だと思う。

シェトランド四重奏”第2弾は「白夜に惑う夏」、原題は“WHITE NIGHTS”。次は“白”なんだな。

とりあえず予約しよう✋