今日も暑かったです。
冷たい麺を食べたくなったけど、もう、そうめんもないし・・・
仕方ないのでスパゲティにしました・・・
宮本輝作の「錦繍」。
初めて読んだのは24才のとき。
20代、30代、40代、そして50代と、秋になると思い出したように手に取る本です。
前略
蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、
本当に想像すら出来ないことでした。
これが書き出しです。見てのとおり手紙で始まりますが、最後まで書簡体でかかれています。
この書き出しの一文からいろいろなことがわかります。
- 男と女が再会したらしいこと
- それは全くの偶然であり、女にとって青天の霹靂の如き出来事であったこと
- その再会について女が当の相手である男性に対して手紙を書いていること
文庫版の解説を書いている黒井千次さんが上の3つを挙げています。
手紙を書いているのは、勝沼亜紀という30代半ばの女性。
住まいは西宮市の香櫨園です。
初めて読んだ独身時代は想像でしかなかった香櫨園の地が、結婚後こんなに身近になるというのも、
改めてびっくりです。
作品中に登場する「モーツァルト」という喫茶店を、このへんかな〜と想像したり。(もちろんフィクション)
昭和53年初版発行なので、もちろん震災前、だいぶ様子が違いますがそれはそれ。
小説として楽しむには何ら問題はないです。
亜紀さんと男性との間で交わされた手紙は、1月中旬に始まり、11月中旬に至るまで、14通に達して終わります。
私は宮本作品のファンで、この「錦繍」は「春の夢」と一二を争うくらい大好きな作品です。
(「春の夢」についてはまたの機会に)
何度も何度も読んで、手持ちの文庫の紙は日焼けし、最近は小さい字を読むのがしんどくなってきました。
それでも、来年の秋もきっと読むでしょう。 蔵王の燃えるような紅葉を想像しながら。