昨日は奈良の実家へ行っていました。
電車は海外からの観光客でいっぱいでした。これだけ見ると、すっかりコロナの前に戻った感じ。
「歯車」(芥川龍之介 著)を読みました。
「河童」と同じ文庫に収められていたので読んでみました。
主人公はAという作家で、間違いなく作者 芥川のことでしょう。不眠や幻視・幻聴などの症状に悩まされ、文筆にも影響を及ぼすような状況。
どこかへ出かけようとして、出合う信号に毎回引っかかってしまうと運が悪いと思うし、全く引っかからなければ今日はツイてると思う。誰でもそうだと思う。
でも作者はそんなただの運の悪さでも、不吉な予兆を感じ、「死」が迫っているように感じるのだ。
読んでいて、私は哀れを覚え辛かった。
主人公“僕”が涙を流すシーンがある。
やっと彼の帰った後、僕はベッドの上に転がったまま、「暗夜行路」を読みはじめた。主人公の精神的闘争は一々僕には痛切だった。僕はこの主人公に比べると、どのくらい僕の阿呆だったかを感じ、いつか涙を流していた。同時に又涙は僕の気もちにいつか平和を与えていた。
(「歯車」より)
この話を抒情的に読んではいけないのだろう。でも「泣いていいのに」と思ってしまう。
私には「河童」のほうがおもしろかったなと思う。