もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「夜のピクニック」

少しずつ寒さが増してきました。もう立冬も過ぎて暦上は冬なんですね。

 

恩田陸さんの「夜のピクニック」を読みました。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

 

 ずっと読みたいと思っていた作品で、BOOK OFFで購入して

やっと読めました。

 

第2回本屋大賞受賞作品。

本屋大賞の第1回受賞作品は小川洋子さんの「博士の愛した数式」。

第3回はリリー・フランキーさんの「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」。

世代を通じて愛された作品が選ばれるようです。

 

夜のピクニック」は夜の遠足、夜間歩行に挑戦する高校生の

足かけ二日間を描いた小説です。

とても読みやすく、寝る前読書の私も3夜で読了しました。

主人公は、甲田貴子(こうだたかこ)と西脇融(にしわきとおる)のふたり。

高校三年生の秋、3度目の夜間歩行(歩行祭)を共に迎えました。

貴子と融、ふたりの視点が交互に現れ、物語は進みます。

貴子と融の通う北高には修学旅行がなく、1年生から3年生まで秋は

この歩行祭という行事に参加します。

朝の八時から翌朝の八時まで歩くというこの行事は、夜中に数時間の仮眠を挟んで前半が団体歩行、後半が自由歩行と決められていた。前半は文字通り、クラスごとに二列縦隊で歩くのだが、自由歩行は、全校生徒が一斉にスタートし、母校のゴールを目指す。

24時間で歩く距離は約80㎞。片道40㎞というのだから尋常ではない。

貴子は今回の歩行祭にある賭けをしていた。

貴子と融のあいだにはお互いの親友も知らない秘密があったのだ・・・

 

目の前に大学受験を控えて、彼らはこれまでの高校生活を振り返る。

それは特に珍しいことではなく、誰もが抱えたことのある思春期の

悩みや後悔、友情、恋心、と読んでいて懐かしい気持ちになる。 

歩行祭のあいだ、貴子と融の目を通して、移り変わる時間と景色が描かれる。

それがとてもリアルだ。

晴れた秋空、強い日差し、真っ赤な夕焼け。しんとした夜。

読者は知らないあいだに彼らと一緒に夜間歩行をしている。

貴子視点の最後の一節。

歩行祭が終わる。

ラソンの授業も、お揃いのハチマキも、マメだらけの足も、海の日没も、缶コーヒーでの乾杯も、草もちも、梨香のお芝居も、千秋の片思いも、誰かの従姉妹も、別れちゃった美和子も、忍の誤解も、融の視線も、何もかもみんな過去のこと。

何かが終わる。みんな終わる。

頭の中で、ぐるぐるいろんな場面がいっぱい回っているが、混乱して言葉にならない。

だけど、と貴子は呟く。

何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ。 

 

物語の本当の最後は、このあと、貴子でも融でもないあるキーパーソンの

視点で締めくくられる。

これがまたいい。

出発時とは全く違う顔をした貴子と融の姿を、キーパーソンの目に映して、

ゴールという名の新たな旅立ちを表している。

彼らにエールをおくって、私の夜間歩行も幕を閉じた。

 

高校生が主人公のお話といえば。

去年読んだ宮部みゆき氏の「小暮写真館」が強烈で、読後は「小暮写真館ロス」状態に

なり、かなり長い間ぼーっとして読書をする気になりませんでした。

「小暮写真館」はまだブログにアップしていないと思うので、

ほどほどに再読して載せたいと思います。

(しかし思い出してもつらいな~)

 

インフルエンザの予防接種も今週の月曜に済ませ、そろそろ年末の準備

をとは思っています。でもどうなるやら・・・