もりっちゃんのゆるブログ

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「ボッティチェッリの裏庭」を読みました

東北まで梅雨入りし本格的な雨シーズンになりました。

たまの晴れ間がうれしいです。

 

ボッティチェッリの裏庭 (単行本)

ボッティチェッリの裏庭」(梶村啓二 著)を読みました。

この本はたまたま図書館の開架棚で見つけ、表紙の懐かしい絵

プリマヴェーラ」に惹かれて借りました。

貸出期間中に予約がつき延長できなくなったので、読んでる途中の

本をいったんおいて、こちらを先に読むことにしました。

 

著者の梶村啓二さんは初めて読む作家です。

発行は2019年8月。比較的新しい本ですね。

 

読んでみてびっくり! 久しぶりにストーリーに驚かされた本を

読んだ思いです。

主人公は総合電機メーカーで技術研究員として働く、早瀬孝夫(タカオ)。

趣味の釣りを通じて親友となったドイツ系スイス人のフランツが

急死し、その妻カオルから「相談したいことがある」と

メールをもらった。

ベルリンに住むカオルのもとへ出向いたタカオ。

待ち合わせの場所にカオルの姿はなく、そこにいたのは

フランツとカオルの愛娘カサネだった・・・

 

クライマックスのシーンがまさに絵画のように美しく、

すべては夢だったのかとさえ思わせる幻想的な場面で。

その余韻を味わいながら結末へ。

クライマックスの高揚した気分が徐々に落ち着てきて、

よしよしそろそろ終わりだな。

そんな心境をいきなり打ち破る大どんでん返しが

最後の最後に用意されていました。

えー! まじかー そんなんありかー

なるほどな、最初からちゃんと読んどかなあかんねんな。

ミステリーの鉄則を再認識させてくれた作品です(笑)

 

本筋の話(タカオの話・201X年と設定)に2通の手紙文が

差し込まれている。

1通は1510年(!)、もう1通は1945年だ。

現在と過去が交差するが、読んでいて違和感やわかりにくさは

ない。

次に予約がついているので今再読はできないが、

ストーリーを知ったうえで、もう一度歴史や芸術を考えながら

読み直したいと思う。

 

さて、ボッティチェリ(この本ではボッティチェッリと表記)に

ついて少し書いておこうと思います。

私はボッティチェリの2大作「プリマヴェーラ」と「ヴィーナスの誕生

を、イタリア・フィレンツェウフィツィ美術館

27歳のとき見ました。

魂が抜けた瞬間でした。

何も声が出せないし、動けない。

立ったままぼーっとただ絵を見ている。そんな瞬間でした。

あんな大きな絵を見たのは初めてでしたし、

大きな展示室に何の囲いやガラスもなく、どーんと壁に掛けてある

だけなのに、圧倒的な存在感を感じました。

プリマヴェーラ」はこの本の表紙の絵で、イタリア語で“春”。

ヴィーナスの誕生」は貝殻の上にヴィーナスが立っている絵で、

ご存知のかたも多いと思います。

30年以上経ってもこのボッティチェリの絵の衝撃は忘れられません。

幸せな記憶です。

 

この本を読んでボッティチェリという画家の人となりや、

ルネサンス期の画家たちの運命について、少し思いを馳せることが

できます。それも魅力です。