もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「ローマ人の物語Ⅵ」を読みました

緊急事態宣言も解除され(蔓延防止措置に移行)、

感染者も少なくなったので、行きたい美術展の現況を調べたり

しました。

今月27日が会期末の展覧会が2つ。もう日にちがない。

この2つの展覧会はあきらめました。(T_T)

オンラインショップで図録だけでも注文しようかと思って

います。

 

パクス・ロマーナ──ローマ人の物語[電子版]VI

ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」(塩野七生 著)を読みました。

シリーズ6作目。

ユリウス・カエサルの巻(ⅣとⅤ)の後はちょっと気が抜けて

しまいました。

Ⅳは戦争ばかりでⅤは暗殺、とドラマティックすぎたのかも。

オクタヴィアヌスがローマの内乱を生き残り、カエサルの理想とした

ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスになりました・・・

と書いてしまえば簡単だが、実際は歴史の教科書のようにいかない。

共和政が急に帝政に変わったら、反発が起こる。

反発がやがて内乱になる。

だから、オクタヴィアヌスアウグストゥスとなってからも、

帝政を目指していると周りからわからないように、

少しずつ改革を進めた。 

一つ一つは完全に合法でありながら、それらをつなぎ合わせていくと、

共和政下では非合法とするしかない、帝政につながっていくからである。

(「ローマ人の物語Ⅵ」 “第一部 統治前期”より)

 

アウグストゥスはまれなる美男だったそうだ。

古代ローマの彫像の中で最も多く残っているのは、

初代皇帝アウグストゥスの像で、そのすべてが30代のアウグストゥス

像なのだそうだ。

77歳まで長生きしたアウグストゥスは、わざと若く元気なイメージを

演出したのだろうと言う。へえ~。

 

パクス・ロマーナ(PAX ROMANA/ローマの平和)の時代は、

高度成長期から成長維持期に入り、少子化が問題となる。

紀元前一世紀末のローマが、貧しく、将来に希望がもてなかった

のではない。それどころか、反対であったのだ。ただ、子を産み育てる

ことの他に、快適な人生の過ごし方が増えたのである。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第一部 統治前期”より)

古代において少子化が問題となるなんて思いもしなかった。

人口が増えて食糧難になるならともかく。

国が安定し豊かになると起きることは今も昔も同じということ。

アウグストゥスの行った少子化対策は、今ならとても受け入れられない

強硬策だ。

独身も子どもを産まないことも禁止されてはいない。でも経済的に

社会的に非常に不利になる。特に女性には。

私の感想ならば、税からの控除とか家族手当の増額程度の対策では

解決不可能なのだと、妙に感心したものである。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第二部 統治中期”より)

(略)離婚一つをとりあげただけでも、禁じたことに違反したがゆえに

くだされる罰、という考え方のキリスト教に対して、禁じはしないが

不利は甘受しなければならない、というローマ人の考え方は興味深い。

「法の精神」とは、ほんとうのところ、このあたりの「平衡感覚」を

指すのではないか。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第二部 統治中期”より) 

自由と秩序は、互いに矛盾する概念である。自由を尊重しすぎると

秩序が破壊され、秩序を守ることに専念しすぎると、自由が失われる。

だが、この二つは両立していないと困るのだ。自由がないところには

進歩がなく、秩序が守られていないと、進歩どころか今日の命さえ

危うくなるからだ。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第二部 統治中期”より)

古代ではまだ自由と秩序の対立だが、近代以降ではそれに個人と

国家の対立が出てくる。 

ますます解決は困難になっていると思う。

だが、それこそ人智を結集して解決を図らないと、

人がいなくなれば国家は成り立たなくなる。

 

アウグストゥスは「相続税」という概念を考え出しました。

第一に、まったく新しい税であるから、他と比較しようがない。

第二、毎年払うわけではない。

第三、遺産を相続するという幸せな時期に払うので、抵抗感が

薄れる。

第四、ローマ軍の兵役を満期まで勤めあげた兵士への退職金

支払いのための資金、というはっきりした目的税であるために

反対しにくい。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第二部 統治中期”より)

第五と第六もあるが省略。第三には笑ってしまった。 

 

アウグストゥスはその頃としては77歳という長寿だった。

でもそのぶん身内や親しい人を生きている間に多く失ったといえる。

長生きすることは、親しい人の死に出会う回数が増えることである。

とくに死が自分と同年代の人を襲うことが多くなると、

人間は老いを、そして自分の死も、深く感ずるようになる。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第二部 統治中期”より)

そうだろうと思う。私の親も「久しぶりの便りは亡くなった便りだ」

とか「人の葬式ばかり行くようになった」とよく言っていた。

 

人間とは、不可思議な生きものである。負ければ責任のなすり合いで

分裂し、勝てば勝ったで、今度は嫉妬で分裂する。それゆえに、

勝つか負けるかよりも、分裂することで持てる力の無用な消耗を

したか、それともしなかったのかのほうが、最終的な勝敗を決する

のではないだろうか。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第三部 統治後期”より)

アウグストゥスは血縁にこだわった人だと筆者は言っている。

アウグストゥスを後継者にしたユリウス・カエサルは、血縁にこだわら

なかったと言われている。

カエサルのお姉さんの娘の子どもがアウグストゥスだから、

血縁があるといえばある。が、自分の直系ではない。

アウグストゥスは自分の直系にこだわり、幼い孫を後継者にし、

妻の連れ子であるティベリウスの嫉妬をかった。

(結局自分の考えた後継者には先立たれ、ティベリウスを後継者に

するしかなくなる)

 

ローマ人は、時代の要求に応ずるために政治形態は変えた。

だが、彼らの魂とも言うべき生き方の根本は維持しつづけたのである。

(「ローマ人の物語Ⅵ」“第三部 統治後期”より)

ローマは共和制から帝政へ移行する。

アウグストゥスはみずから皇帝とは名乗らなかったが、

実質的な初代皇帝。

次巻は2代皇帝ティベリウスから5代皇帝ネロまで。

ネロは暴君と言われてますがどうなんでしょう。

 

まだまだだなあ、全15巻・・・