もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「抱擁、あるいはライスに塩を」を読みました

体調も鑑みてしばらくゆっくりするために、ブログの更新を

読書の記事のみにすることにしました。

たまっている下書きをアップしたあとは更新が滞りがちに

なると思いますが、ご容赦ください。

読書の記事はどちらかというと自分の記録の要素が大きいので、

あまり面白くないと思います。

はてなブログは記事ごとの公開設定ができず、ブログ全体を非公開

にして全く私的なブログにしてしまうか、

ブログ全体を公開(公開範囲は指定できる)するかの選択しか

ないので、考えた結果私的なブログを公開するという変な選択に

なってしまいました。

また楽しい記事が書けるようになったら、みなさんにも読んで

もらえればと思います。<(_ _)>

 

抱擁、あるいはライスには塩を

 「抱擁、あるいはライスに塩を」(江國香織 著)を読みました。

 

とてもおもしろかったです。

江國作品の長編は「彼女たちの場合は」に続いて2作目。

約600ページの長さで、ミステリーでもないのに、おもしろくて

どんどん引き込まれていきました。

 

最初目次を見たときは驚きました。

  1. 1982年 秋
  2. 1968年 晩春
  3. 1968年 秋
  4. 1987年 夏
  5. 1960年 秋

    ・

    ・

    ・

年代がころころ入れ替わるので、ややこしいなと思ったのです。

読み終わってみれば問題ありませんでした。

 

登場人物は、大きなお家に住む柳島(やなぎしま)家の人たち。

章ごとに語り手が変わります。

第1章の語り手、柳島陸子(りくこ)からみた家族構成は、

姉の望(のぞみ)、兄の光一(こういち)、弟の卯月(うづき)、

父の豊彦(とよひこ)、母の菊乃(きくの)、

叔母(母の妹)の百合(ゆり)、叔父(母の弟)の桐之輔(きりのすけ)、

祖父の竹治郎(たけじろう)、祖母の絹(きぬ)。

陸子たち4人きょうだいは、1人が父が異なり、1人が母が異なるのだが、

共に暮らしている。

この大家族の話だと思って読み始めたけれど、どうもこの話の主人公は

大きなお家のようです。

10人で暮らしていた1982年から、最終章(第23章)の2006年には

このお家には3人が身を寄せ合って暮らしているのでした。

 

章ごとに感想を書きたいくらい、いろいろ思いがあふれてきます。

ひとつだけ取り上げることに。

第6章 1963年 冬

陸子の叔母である百合が結婚し、半年で離婚して家に帰って来る話。

この結婚生活が、私が母から聞かされた結婚生活とびっくりするほど

シンクロするのだ。

こんな(どんななのかは読んでみて)結婚生活、現在では考えられないかも

しれないけれど、年代が私の生年であることからも、その頃は

普通だったのかもしれない。

母が作った朝食のお味噌汁を、祖母が鍋ごとシンクに捨てたエピソードを

私は象徴的な出来事として覚えていたが、

この第6章を読んで、その他のこまごましたエピソードを思い出した。

母が今、幸せだといいのだけど。

 

タイトルの「抱擁」は、この家族の挨拶の一方法、

「ライスに塩を」は菊乃、百合、桐之輔きょうだいの合言葉だ。

合言葉は、ほかにも出てくる。

「かわいそうなアレクセイエフ」と言えば

「みじめなニジンスキー」と返す。

家族の楽しさと悲しさ。人間の孤独と誇り。

大家族の家は長い時間それを見守り続けてきたことに

なるのかな。