「厳冬の棺」(孫沁文(そん・しんぶん/スン・チンウェン) 著/阿井幸作 訳)を読みました。
“華文ミステリ”と紹介されていましたが、中国のミステリーを初めて読みました。
カタカナではないけれど、漢字の固有名詞もやっかいではと恐れましたが、それは杞憂でした。人名の中国読みは、章が変わるたびにルビがふられ、注釈も丁寧でした。
上海の郊外にある胎湖(タイフー)という湖。物語の舞台は、そのほとりに建つ陸(ルー)一族の館である。
上海で声優の仕事をしている鐘可(ジョン・クゥ)は、破格の家賃に惹かれ、陸家の館の部屋を借りることにした。それから1年、陸家の当主 陸仁(ルー・レン)が半地下の貯蔵室で遺体で見つかる。貯蔵室の扉は連日の大雨で水没していたにもかかわらず、部屋の床は乾いていて、外部から侵入された形跡はなかった。
はい、密室です。
青浦区第二刑事連隊副隊長の梁良(リャン・リャン)と見習い女性警官 冷璇(ロン・シュエン)が捜査に当たるが、犯人はおろか、密室の謎も解けない・・・
この梁良の紹介がおもしろい。
梁良は警察隊のなかで男前の部類だ。長くも短くもない髪はいつも梳いてきれいに整え、濃い眉毛の下には力みなぎる両目が輝き、高い鼻にくっきりとした輪郭、そして日焼けした肌、見ようによっては日本の俳優の織田裕二にも少し似ている。
(「厳冬の棺」より)
梁良のケータイの着メロが「踊る大捜査線」のテーマ曲だということも含めると、このドラマは中国で有名なのかな。
第二、第三の事件が起こり、その現場も含めて3つの密室の謎が提示される。密室好きならたまらない。
密室トリックは本格ミステリーで盛んに書かれて、パターンとしては出尽くした気がしていたが、まだまだ新しいパターンが作れるのだとうれしくなった。
密室トリックの他にも、胎湖に伝わるおどろおどろしい伝説や陸一族の因縁、事件を解決する漫画家探偵の過去など、興味をそそられる要素はたっぷりある。私もこちらの方がおもしろく感じた。
続きは次回・・・と言わんばかりの終わりかたで、早く次作が読みたいと今から思っている。