もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「人間の絆」(上)を読みました

冷たい雨の一日でした。☔

ほんまに寒いです。12月でこんなに寒いのは何年ぶりかと思います。

いよいよ湯たんぽを準備しようかと思っています。

お湯を入れる原始的な湯たんぽです。

入れ物もカバーもピンクなので気に入っています。

あと、「ゆずはっさくネード」と昆布茶を買いました。

あたたかい飲み物が欠かせません🍵

 

人間の絆(上)(新潮文庫)

「人間の絆」(上)(サマセット・モーム 著/金原瑞人 訳)を

読みました。

 

モームの作品を読む日が来るなんて、自分にびっくりです。

海外の文学作品は恥ずかしいほど読んでなくて、

読みにくくて難しいと勝手に思っていたところがありました。

最近になって、好きな分野のミステリーから翻訳ものを読むようになり、

文学作品にも少しずつ挑戦しています。

(この歳で・・・

「アンナ=カレーニナ」は4巻中2巻で止まっていますが(^^ゞ)

 

このモーム作「人間の絆」は、本猿さんのブログで紹介されていて、

読みたいと思いました。

図書館では、全集もので読むか(百科事典のような本)、

古い訳本しかなかったので、思いきって文庫を購入しました。

訳者の金原瑞人(かねはらみずひと)氏は、作家の金原ひとみさんのお父さまです。

昨年11月発行の新訳なので、字も大きくとても読みやすい。

海外の作品でこんなにするすると読める本は初めてでした。

翻訳もさることながら、たぶんモームの書いた原文も平易な文章

なのではないかと思いました。

まだ上巻を読み終えただけですが、考えさせられること、

過去を振り返ること、うーむと唸ること、がそこかしこにあり、

とても奥深い作品でした。

 

「人間の絆」と訳されている原題は『Of Human Bondage』。

“Bondage”は辞書を見ると、束縛、屈従とある。

“絆”と訳されると日本語では人と人との固い結びつきとして、

よいイメージがあるが、本書では、人が生きていくうえで

切っても切れない人との関わり、いいも悪いも含めて表して

いると思う。

 

主人公はフィリップ。

父親は医者だったがフィリップが幼いときになくなり、

9歳のときには母親も病死し、牧師の伯父夫婦にひきとられる。

生まれつき片足が不自由なこともあり、内気で打ち解けにくい

性格。

そんなフィリップが成長とともに経験する夢と挫折、

仕事と恋愛、人生についての悩みが描かれている。

ざっくり言ってしまえばこうなるが、

この作品の魅力は、決してよい印象ではない主人公フィリップに、

なぜか自分を投影してしまうところだ。

親(フィリップにとっては伯父夫婦)のすすめに反発して、

家を出る。自由を求めて新しい土地へ行く。

こんなはずではなかったと家に戻る。

次は後悔のないように道を選んだのに壁にぶち当たる。

自分のやりたいことは何なのか悩む。

きっと誰もが、フィリップの分かれ道に自分の過去を見つける

だろう。

 

私とフィリップの違うところは、フィリップは純粋で誠実な

ところだ。ごまかしていない。そこがすごい。

「大人になるってそういうことやん」

そんなふうにごまかしてきた私とは違う。

若いときにこの作品を読んでいたら、どうだったろう

と何度も思った。

 

フィリップにはまだわかっていなかったが、人間という旅人は

険しい不毛の大地をどこまでも歩いてようやく、現実を

受け入れるようになる。青春が幸福に満ちているなどというのは

幻想、それも青春を失った人々の幻想にすぎない。それにひきかえ、

若者は自分たちのみじめさを身をもって知っている。なぜなら、

地に足の着いていない理想にあふれていて、現実にぶつかるたびに、

傷つき苦しむのだから。

(「人間の絆」(上)29より)

 

通りを歩く人々をながめ、仲間のいる人間をうらやましく思った。

ときどき、うらやましい気持ちが憎しみに変わる。みんな楽しそうなのに、

なぜ自分はみじめなんだと考えてしまうのだ。大都会でこれほど

つらい思いをするとは、想像したこともなかった。

(「人間の絆」(上)37より)

 

ここでは2か所引用したが、「ちょっとわかるよ」と共感したり、

「深いなあ」と哲学的な警句に感じたりする部分が多かった。

 

上巻の最後では、フィリップがミルドレッドという女性に夢中に

なっているが、私は「やめといたほうがええで」と言いたい。

(→下巻に続く)