もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「冷血」(上・下)読みました

2月になりました。今日は節分。今が一番寒い時期ですが、

去年に比べると今年はだいぶ暖かい気がします。

でもインフルエンザも流行っているし、気をつけなくては。

 

髙村薫 著「冷血」(新潮文庫)を読了しました。

冷血(上) (新潮文庫)

冷血(下) (新潮文庫)

髙村氏の作品、私は「マークスの山」「照柿」「レディー・ジョーカー」

に続いて4作目です。

「レディー・ジョーカー」からかなり月日が経ったので

小説の中に入るのにこれまた時間がかかりました。

この4作は「合田雄一郎シリーズ」と呼ばれ、

この作品の中で刑事の合田さんは40過ぎのおっさんになり、

捜査一課の強行犯係から特殊犯係に異動になって、普段は医療過誤事件の

捜査のためにカルテや医療用語と格闘する日々を送っています。

そんな2002年の年末、東京都北区で歯科医一家四人強盗殺害事件が

起こります。

 

髙村薫氏の作品は時代を色濃く映していて、モデルと思われる事件や

事故も推測できることがあるのですが、

私はすぐに2000年の大晦日に発生した世田谷一家殺害事件を思いました。

読んだ文庫には解説は付いてなくて、この作品のレビューや解説文の

チェックもしていないので、実際モデルとなっているのかはわかりません。

世田谷一家殺害事件のほうは、残念ながら未だ解決に至っていませんが、

小説のほうは、翌年3月容疑者2人組が逮捕されます。

 

刑事ものというわけではなく、もちろんミステリーでもなく、

事件の経過と容疑者、捜査関係者、司法関係者、被害者家族など

周辺の人々をまるで捜査資料のように冷静に時に熱く語った小説です。

タイトルの「冷血」は残虐な犯罪を犯した容疑者たちのことを表して

いるのかと最初は単純に思いましたが、

読み進めるうちにだんだんそれだけではないのでは と思えてきました。

「冷血」な容疑者たちに対して、被害者家族はもちろん、

容疑者の親族も複雑な感情を通り越して冷たい言葉を放ちます。

 

容疑者の一人、戸田吉生が送検後拘置所で顎骨骨髄炎を悪化させ

敗血症ショックのため重体になるシーン。

様子を聞きに行った合田刑事に対し、担当医は

「私が歯科医なら、歯科医を殺しておいて、自分の歯の治療なんか

してもらえると思うなって言いますよ、たぶん」と言い、

『これもまた、いかにも医師らしい、骨が震えるほどの冷血ではあった』

と合田刑事に語らせています。

 

「罪」はある。ならば「罰」もあるべき。

「罪」の形もはっきりしていて、法律上、法制上「罰」の形も

はっきりしている。それ以外の収束点は何もないのに、なぜだろう、

この虚しさと冷ややかさは。

その中で、容疑者(裁判が始まってからは被告人)と合田刑事のあいだで

やりとりされた手紙に心を奪われた私の神経はどうかしているのだろうか・・・

などど絶えず考えた重厚な作品でした。

 

なかなかしんどい読書だったので、下書きを更新しながらアップには

5日ほどかかり、冒頭のあいさつは何度も書き直すことになりました(笑)

今からは力を抜いて。

今日は恵方巻を買いに行きました。塩いわしを焼いて、お味噌汁を

作りましょう。 (あ、福豆も食べますよ)

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  (無料イラストより)