「ライオンのおやつ」(小川糸 著)を読みました。
図書館に予約をかけてから、2年以上待ってやっと回ってきた本です。その間に本屋さんでは文庫が並ぶようになってしまいました💦
主人公は海野雫。30代の女性。癌を患い治療を続けたものの余命を告げられ、ホスピスで最期の時を過ごそうと考える。
そのホスピスは、瀬戸内に浮かぶ「レモンの島」にある「ライオンの家」。
「ライオンの家」に入所する人たち(患者さん)とそこで働く人たち(看護師やヘルパーさん、ボランティアさん)が、グループホームのような雰囲気で暮らす様子を描いている。
病気が悪化するにつれ、死期が近づいていることを知り、今までできていたことがだんだんできなくなっていく。これは想像するだけでつらい。
しかし、マイナスばかりではないことを雫の姿や「ライオンの家」での営みから気づくことができた。
手放すことは多いけれど、得ることもあるのだということ。
「ライオンの家」で最期を迎える人は、みな“求道者”のようになっている。死の先を見ているのだ。それがすごい。
生と死を真剣にみつめた人に見える世界なんだろう。
「ライオンの家」では一週間に一度“おやつの時間”があり、入所者がリクエストした思い出のおやつをみんなで食べる。本のタイトルもここから来ている。
私が今食べたいおやつはなんだろう。もう体が受けつけなくなっても、目で見たい、香りを嗅ぎたい、手で触りたい、おやつは何だろう。
自分がこれまでに食べたおやつとは限らない。自分が大切な誰かのために作ってあげたおやつ、誰かと一緒に食べたおやつもある。
おやつをリクエストするとき、否応なく自分のこれまでを振り返ることになる。
それはなかなか壮絶だ。
重い題材なのに全然暗くない。それは舞台が瀬戸内だというものあるだろう。
光や風に色がついているような感覚さえある。それは人の最期のきらめきのようで、私はその眩しさに涙を抑えられなかった。
これから何度おやつを食べるかわからないけれど、その時間を大切にしたいと心から思った。