「忘れられた花園」(下)(ケイト・モートン 著/青木純子 訳)を読みました。
最後は、主人公の一人 カサンドラの明るい未来が示唆され、こちらもハッピーな気分になれたが、解明された謎のあまりの怖さとどす黒さに圧倒されてしまった。
<注意! このあとネタバレします>
上巻の記事で、オーストラリアの港に置き去りにされた少女 ネルの物語と、ネルの孫娘 カサンドラの物語が平行して描かれると書いたが、実際は童話作家イライザの物語を入れて三本立てになっている。
上巻を読んだ時点でも、“主な登場人物”の紹介ページがないことに気づき、仕方なく手書きで人物リストを作って読んだ。
最終的には40人近くになり、その中に時代を越えてつながる人物が多くいる。
登場人物の関係を初めから明らかにしてしまうと、この話はそれだけでネタバレになってしまうというわけだ。
ネルがなぜ置き去りになれたのか? ネルの両親は誰なのか? コテージの花園にはなぜ壁があるのか?
その謎の正解は読者にしかわからない。
ネルがコテージを購入したときに得た情報も、カサンドラが最後に得た答えも、どちらも完全な正解ではない。時間が経ちすぎて、謎を知る人物が亡くなっていたり、本当に死ぬまで秘密を明らかにしなかった人物もいて、物語の中では謎は謎のままなのである。
もうひとつあるかな、謎を知るもの。
“花園”。
荒れ果てていたけれど、滅びてはいなかった“花園”。
最後に、印象に残ったセリフを引用しておく。
「人生は自分が手に入れたもので築き上げるものよ、手に入れ損なったもので測っちゃ駄目」
(「忘れられた花園」(下)より)
カサンドラの友人ルビーのことば。
過去は変えられない。過去を見る自分を変えられるだけ。
コテージの建つ断崖で潮風に向かって立ち、遠く海原を見つめる赤い髪の少女がきっときっとそうつぶやいている。