「過ちの雨が止む」(アレン・エスケンス 著/務台夏子 訳)を読みました。
「償いの雪が降る」の続編になります。
原題は“The Shadows We Hide”で、こちらもかなり意訳されていますね。
前作から5年後、主人公のジョー・タルバートは大学卒業後 通信社の記者になっている。パートナーのライラはロースクールを終え、司法試験を控えて猛勉強中。
母の元からひきとった弟のジェレミーは軽作業の仕事を始め、3人の同居生活は続いていた。
そんなジョーに、仕事では自ら書いた記事が原因で訴えられ、プライベートではいまだ会ったことのない父親(かもしれない人物)の死を知らされるというアクシデントが襲う。ジョーは、仕事の行く末を案じながら、その人物の死の真相と実像を追うのだった。
前作に続き、とてもおもしろかった。
やや安易に思えるハッピーエンドだった前作だったが、この5年間の紆余曲折も描かれ、とても順調ではなかったことがわかる。
アルコールと薬物の依存症だった母親から、自閉症の特性がある弟ジェレミーを引き取り後見人となったこと。
そのため母親とは絶縁したこと。
法律家を目指すライラが落ち着くまで、プロポーズはお預けなこと。
ジェレミーの仕事がなかなかうまくいかないこと。
これらのひとつひとつに葛藤があり、決断を下したあとも後悔と苦悶がある。
納得はしていても、心の底では「こんなはずではなかったのに」という恨みや妬みがある。
そんなジョーの心の弱さも描かれ、より好感が持てる。
過ちを犯したジョーに、ライラが泣きながらかける言葉が刺さった。
「わたしはあなたがいい人間でいてくれれば、それで充分だった。求めていたのは、それだけよ。あなたはスーパーマンにならなくても私を幸せにできる。ただ、真っ当な人でいてくれるだけでよかったの。なのにあなたにはそれができなかった」
(「過ちの雨が止む」より)
真っ当に生きることは結構難しい。大人になればなおのこと。
間違いなく言えるのは、ジョーにもライラにもジェレミーにもまだまだ時間がたっぷりあるということだ。
雨が止めば次は晴れる。彼らの新たなこれからに期待したい。
前作でちょっと悪いイメージだった大家さんのテリー・ブレマーさん。
意外にいい人だった。
このシリーズ、この先はまだ出ていない。ストーリーを覚えているうちに出てくれればいいのだが・・・