「キドリントンから消えた娘」(コリン・デクスター 著/大庭忠男 訳)を読みました。
「ジェゼベルの死」に続き、ハヤカワ・ミステリ文庫の「このミステリがヤバい!」フェアで紹介されていた本。
これも同じように図書館本で読みましたが、旧版で小っちゃい字。
でもがんばる!
書店では帯に青崎雄吾氏の推薦文が載っていました。
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メインテーマは<家出>。事件の深度に気づくころには、本を閉じられなくなっている。
その通り、小さい字でも一気読みでした。
二年前に失踪した娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届く。
“親愛なるママとパパ
あたしは大丈夫だってことをお知らせしたいの。心配しないでね。今まで手紙を書かないでごめんなさい。でもあたしは大丈夫よ。
バレリー”
失踪事件を担当していたエインリー主任警部が事故死した翌日、この手紙は送られてきた。
エインリーの死とバレリーの失踪は関係があるのか?
そもそもバレリーは生きているのか? 生きているならどこでどうしているのか?
捜査を引き継いだモース主任警部は疑問に感じつつ、ルイス部長刑事と動き出す・・・
主人公のモース警部がユニーク。
クラシック音楽(特にワーグナー)と新聞のクロスワードパズルを愛する一方、独身でお酒と女好きの中年のおじさん。
捜査方法も、事実に基づく推理というより、直感から来る妄想を膨らませるタイプなので、仮説を立てては崩される。
「もうこの事件から手を引く」とルイスに宣言するモースだったが、実は真相の一歩手前だったのだ。
これほどスクラップ&ビルドが繰り返されると、もう何が何やらになってきて、最後の章は何度も読み返すはめになった。
結局、捜査はまだ続く・・・ってことなん?
ユーモアのある比喩が多く登場するが、ひとつだけ紹介を。
ワーグナーのオペラを聴きに行ったモース。席に着くとー
右側には長い紫のドレスを着て、とりすました、眼鏡をかけた若い女性が大きな楽譜を膝においてすわっていた。モースは席につくとき会釈して、ていねいに、「こんばんは」と言ったが、彼女の唇の端がほんのちょっと動いただけで、すぐにもとの冷たい顔にもどった。おなかの痛いモナ・リザみたいだとモースは思った。彼はもっと愉快な人たちと同席したかった。
(「キドリントンから消えた娘」より)
おなかの痛いモナ・リザってー かなり笑いました。
物語の真相はともかく、最後、母親が娘の部屋にバラを飾るシーンは心に残った。