「血の咆哮」(ウィリアム・ケント・クルーガー 著/
野口百合子 訳)を読みました。
元保安官のコーコラン・オコナー(コーク)のシリーズ、
7作目。
ちょっとタイトルが恐い。原題の「サンダー・ベイ」の方が
私は好きかな。
前に読んだのはシリーズ3作目の「煉獄の丘」でした。
それから3作分とばしたので、コークやその家族の状況も
変化している。
ください。
北部五大湖の西側で北はもうカナダ。
どんな所かな~と想像しながら読むのが楽しい。
今作は初めてコークの一人称(わたし)で語られていて、
コークの目から見た世界、コークの内面がより濃く感じられる。
コークの古くからの知りあい、まじない師のヘンリー・メルーから
「まだ見ぬ息子を探してほしい」と頼まれたコークは、
カナダのサンダー・ベイに向かう。
しかし、息子と思われる人物は、かなりうさんくさい奴だった。
コークはそれをメルーに伝えたが、その直後メルーが襲われる・・・
メルーはどうしても自分から息子に会いに行くと言って聞かない。
逡巡するコークに、メルーは自分の波乱に満ちた過去を語るのだった。
メルーの息子を想う気持ち。
コークの娘を想う気持ち。(コークの長女が問題を抱えている)
それぞれの想いが心に沁みた。
人間の語彙の中で最大の言葉であるLOVEはたった四文字で、
その言葉にはどんな定義もじゅうぶんとはいえない。
わたしたちは犬を愛する。子どもを愛する。
神とチョコレート・ケーキを愛する。わたしたちは
愛にめざめ、愛を捨てる。愛のために死に、
愛のために殺す。愛を消費することはできない。
飢え死にしそうなときにも食べられはしないし、
渇いて死にそうなときにも飲めはしない。
きびしい冬の寒さには役に立たないし、暑い夏の日には
安物の扇風機のほうがまだ使えるだろう。
しかし、この世でなにがもっとも大切かと問われたら、
ほとんどの人間にとってそれは愛だとわたしは強く信じている。
(「血の咆哮」エピローグより)
これだけ読むと安っぽい感傷だと思われるかもしれない。
でも、この物語の最後にはそう信じたい気持ちになるのだ。
コークのシリーズはまだ続くようだし、とばした巻も読みたいが、
いったんここで置きたいと思う。