もりっちゃんのゆるブログ

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「血の咆哮」を読みました

血の咆哮 (講談社文庫)

「血の咆哮」(ウィリアム・ケント・クルーガー 著/

野口百合子 訳)を読みました。

 

元保安官のコーコラン・オコナー(コーク)のシリーズ、

7作目。

ちょっとタイトルが恐い。原題の「サンダー・ベイ」の方が

私は好きかな。

前に読んだのはシリーズ3作目の「煉獄の丘」でした。

それから3作分とばしたので、コークやその家族の状況も

変化している。

舞台は作者も住むアメリカのミネソタ州

アメリカの州にぴんとこないかたは、ぜひ地図で確認してみて

ください。

北部五大湖の西側で北はもうカナダ。

どんな所かな~と想像しながら読むのが楽しい。

 

今作は初めてコークの一人称(わたし)で語られていて、

コークの目から見た世界、コークの内面がより濃く感じられる。

コークの古くからの知りあい、まじない師のヘンリー・メルーから

「まだ見ぬ息子を探してほしい」と頼まれたコークは、

カナダのサンダー・ベイに向かう。

しかし、息子と思われる人物は、かなりうさんくさい奴だった。

コークはそれをメルーに伝えたが、その直後メルーが襲われる・・・

メルーはどうしても自分から息子に会いに行くと言って聞かない。

逡巡するコークに、メルーは自分の波乱に満ちた過去を語るのだった。

 

メルーの息子を想う気持ち。

コークの娘を想う気持ち。(コークの長女が問題を抱えている)

それぞれの想いが心に沁みた。

人間の語彙の中で最大の言葉であるLOVEはたった四文字で、

その言葉にはどんな定義もじゅうぶんとはいえない。

わたしたちは犬を愛する。子どもを愛する。

神とチョコレート・ケーキを愛する。わたしたちは

愛にめざめ、愛を捨てる。愛のために死に、

愛のために殺す。愛を消費することはできない。

飢え死にしそうなときにも食べられはしないし、

渇いて死にそうなときにも飲めはしない。

きびしい冬の寒さには役に立たないし、暑い夏の日には

安物の扇風機のほうがまだ使えるだろう。

しかし、この世でなにがもっとも大切かと問われたら、

ほとんどの人間にとってそれは愛だとわたしは強く信じている。

(「血の咆哮」エピローグより)

 

これだけ読むと安っぽい感傷だと思われるかもしれない。

でも、この物語の最後にはそう信じたい気持ちになるのだ。

 

コークのシリーズはまだ続くようだし、とばした巻も読みたいが、

いったんここで置きたいと思う。