高校野球もとうとう準決勝。
彼らが地元に帰る頃、セミの声に代わって、
秋の虫の声が聞こえてくる。
さあ、酷暑ももう少しの辛抱。
「サキの忘れ物」(津村記久子 著)を読みました。
2年前に新聞の書評欄で目にしてから、そのうちそのうちと
思っているうちに今になってしまいました。
九つのそれぞれに違った雰囲気の短編が収められています。
ひとつ、読んだ作品がありました。
「ペチュニアフォールを知る二十の名所」。
たぶん、複数の作家を扱った短編集でだったと思うが・・・
どの作品もおもしろかったが、やはりタイトルにもなっている
「サキの忘れ物」が一番心に残った。
タイトルからは“サキ”という人の忘れ物の話か、と
想像されるが、少し捻りが入っている。
主人公は、病院に付設されている喫茶店でアルバイトを
している太田千春という女の子。
千春は、結婚して女の子が産まれたら、「サキ」という
名前を付けたいと思っていた。
へえ~私とおんなじじゃない! とびっくりした。
「音が大事!」というのも全く同じ!
一気に親近感が増す・・・
バイト先の喫茶店で、女性客が忘れていった本が、
「サキ」という作家の短編集だったのだ。
その本を千春は秘かに持ち帰り、読んでみようとする。
この「サキの短編集」、私は文庫で持っている。
O・ヘンリが大好きでよく読んでいたが、O・ヘンリと
肩を並べると言われている短編作家が、サキだ。
「おもしろい」というより、「変な話なんだけど、
なぜか心にひっかかる」話だと私は思っている。
そんな共通点もあり、「サキの忘れ物」は何度か読み直した。
誰もが孤独で生きづらい。自分のすぐ隣にも、同じ思いの
人がいる。
そんな人たちに対するさりげない応援のメッセージを
感じた。
それは、九つの短編すべてに感じることだ。
「行列」という作品もおもしろかった。
「あれ」と表現されるモノを目にするために、12時間
かかる行列に並ぶ話だ。
「あれ」が何なのか、最後までわからない。
「あれ」は「あれ」でいいのだけど、それを想像するのも
おもしろい。
表紙の装画もいい。
各作品のモチーフがちりばめられている。
津村氏の長編作品はまだ読んでいない。
機会があれば読んでみたいと思う。