もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「決壊」(上)を読みました

今日はだいぶ元気になりました。

脇のリンパの腫れはまだありますが、熱がないぶん楽です(^^)v

ご心配をおかけしました。<(_ _)>

しんどいときに優しいことばをかけてもらえるのは、

ありがたいことです(*^^*)

 

決壊(上)(新潮文庫)

「決壊」(上)(平野啓一郎 著)を読みました。

平野氏の「ある男」を前に読み、他の作品も読んでみたいと

思いました。

 

表紙に紹介文がありますが、字が小さいので改めて

記します。

2002年10月、全国で次々と犯行声明付きのバラバラ

遺体が発見された。被害者は平凡な家庭を営む会社員

沢野良介。事件当夜、良介はエリート公務員である

兄・崇と大阪で会っていたはずだったがー。

絶望的な事件を描いて読む者に<幸福>と<哀しみ>の

意味を問う衝撃作。

(「決壊」(上)“表紙”より)

 

いきなり事件から始まるわけではない。

良介と崇 兄弟の関係、二人の両親 治夫と和子夫婦の関係、

兄弟と両親の親子関係などが、実家への帰省の様子を通じて

細かく描写される。

特に変わったところのない、ごく普通の親子関係、

兄弟関係に思える。

お互い抱いている相手への不満も、

「まあ、親子でも兄弟でも違う人間なんだから、

わからないこと、理解できないこともあるわな」

と思えることだ。

 

なのに、この居心地の悪さはなんだろう。

兄弟の父 治夫がうつ病の診断を受けたことをきっかけに、

お互いの疑念がまた新たな疑念を生んでいく。

 

「決壊」を辞書で調べると、

(堤防やダムなどが)切れてくずれること。

とあります。

作中に「決壊」という言葉は1箇所しか見当たりません

でした。(下巻も含めて)

沢野兄弟の兄、崇が部下の岸辺とカフェで話すシーン。

「(略)・・・そうして20世紀になって、イギリスによる

オスマン帝国の解体の結果、偶然のように不確かな

国境とともに誕生したイラクという国は、

どうにかこうにか分裂せずに保ってきたわけですね。

僕はそれを肯定してるんじゃないんです、もちろん。

ただ、攻撃すればその百年分の無理が一気に決壊を

起こすでしょうね。・・・(略)

(「決壊」(上)“五 決壊”より)

 

崇のセリフとして登場する「決壊」ということばなのだが、

このくだりは2002年の世界情勢を背景にしていて、

崇の言わんとすることを理解するのは、正直私には難しいのだが、

「百年分の無理が決壊を起こす」ということばには、

何か予言めいたものさえ感じて、寒くなったのだった。

人間関係を潤滑に保つために、

多少の無理はみなしていると思う。

不満があってもあきらめたり、忘れるために気晴らしをしたり。

それでも、知らないうちにそれはたまっていって、

いつか「決壊」を起こすのだろうか・・・

 

次回、下巻に続きます(^^)/