春らしくなってきました。日当たりのよい場所では
桜もちらほら咲き始めました。🌸
今年も近場で静かに花をめでたいと思っています。
「冤罪死刑」(緒川怜(おがわさとし) 著)を読みました。
たまたま図書館で見つけた本です。
タイトルどおり、冤罪と死刑をテーマにした小説です。
死刑判決を受けて上告中の被告人に冤罪の疑いを
もった担当弁護士と通信社の記者が、
その少女誘拐殺人事件を調べ直す。
作者の緒川氏は、元共同通信社の記者。
登場人物の記者とダブる。
だんだん冤罪のほうに読者の気持ちも傾いてきて、
このまま上告審は高裁差戻しー無罪判決を得て
終わりーという流れかと思いきや。
終章でどんでん返しが待っていた。
まさかという真実が明かされるのだ。
序盤から「このエピソードは何の関係があるのか」
と思う伏線がたくさんあり、その収拾がつかないので、
居心地の悪い不安定さをずっと感じていた。
なるほどな~ここで関わってくるのか。あっぱれ!
ストーリーとは別の部分で、
中山七里氏の「死者の祈り」同様、死刑確定囚の様子や
執行時の詳しい説明には結構心が乱れた。
いろんな命の瀬戸際が描かれる。
死刑囚、終末期のがん患者、自殺を図る母親、
骨髄移植を待つ患者。
なかでも、通信社の記者 恩田が、親しくしていた
刑事 村上をホスピスに見舞うシーンが心に残った。
「これでもおれは、割とリベラルな人間なんだよ」
と村上は恩田に伝える。
中・高時代をベトナム戦争の時代に送った村上は
次のように言う。
「(前略)
戦争の実相を知ったアメリカ国民、いや全世界の
人びとが立ち上がったんだ。汚れた侵略戦争はもう
たくさんだ、とね。そんなわけで、おれは、報道の自由
というものを尊重している。公権力が暴走しないように
注意深く監視する役割。報道がその役割を担っている。
おれは、そんなふうに思っているんだ。つまり、
あんたたちの仕事にいくらかの敬意の念を抱いている
ということさ」
(「冤罪死刑」より)
立場や職業を越えたつながりを感じた。
死刑に関する本は、現在の世界情勢の影響もあって
心が折れるのでしばらく間を置こうと思っている。