もりっちゃんのゆるブログ

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「完訳 ファーブル昆虫記 第4巻上」を読みました

長年使っていた毛布に、とうとう穴が空いてしまいました。

(穴が空くまで使うか・・・虫食いではないよ。擦れて薄くなって)

それで新しい毛布を買いました。

なんか出費が続いています~~~

 

完訳 ファーブル昆虫記 第4巻 上

「完訳 ファーブル昆虫記 第4巻上」

   (ジャン=アンリ・ファーブル 著/奥本大三郎 訳)を

読みました。

 

この表紙の虫は何だろう? 何かの幼虫かな? すごい色やな。

どっちが頭なんや。たぶん右側やな。

今までも表紙の昆虫が何かわからないことがありました。

普通は見返しや目次、巻末に載っているものですが、

見当たらないんですよね~

これまでは内容を読んで予想していましたが、今回は

まったくわかりません。

 

第1巻上からずっと続いたハチの仲間の解説は、

今巻の第4巻上と次巻の下で、やっと終わりそうです。

┐(´д`)┌ヤレヤレ

 

今回登場したのは、まずキゴシジカバチ。

腹柄(ふくへい)といって、胸と腹をつなぐ部分が黄色く、

そこを“腰”に見立てています。

このハチは、民家の暖炉の火床の奥の壁に泥で巣を作る。

泥で固めただけの巣なので、雨水に弱く、幼虫が寒がりで

暖かい場所を好むのだ。

私は暖炉のある家に住んだことがありません。

それどころか暖炉のある部屋に入ったことさえないです。

ヨーロッパのホテルの部屋に暖炉を模した装飾はありました。

マントルピースのみ壁についていました。

でも火は入っていないし、使われていないのです。

クリスマスに、煙突から降りてきたサンタが暖炉に落っこちてくる

様子を映画やアニメで見て、想像するだけでした。

 

一見危険に見える、人間に近い場所で暮らす生きものは昆虫以外

にもいます。

人間と即(つ)かず離れず暮らしている動物の一群を人類同調種

シナントロープ)と呼ぶ。これら動物は、環境への順応度がたかく、

人間が作り出し、自然下では得られない環境を積極的に利用して

繁栄している。多くのものは、繁殖力が高く、食性の幅も広い。

安定した環境である人間の家の中で暮らしているドブネズミ、

ヤモリ、スズメ、ツバメ、ゴキブリなどは、その代表的な存在で

ある。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」“1 キゴシジカバチ”訳注より)

もう少し、具体的に説明すると、

人間の家という雨風がしのげる空間や、人間が間接的に用意する

食物(ごみや光によって集まる昆虫、家畜の餌など)によって

繁栄している。

かつては古い家の主と言われていたアオダイショウも、人間の

飼っていたニワトリの卵やネズミを食物として人家で暮らしていた。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」“4 ツバメとスズメ”訳注より)

 

スズメやツバメが、うんと昔、まだ人間の作った人工物がなかった頃、

どこに巣をかけ暮らしていたのだろうとファーブルさんは考える。

それはもちろん自然物を利用していたのだろうと思われる。

それしかなかったのだから。

 

キゴシジカバチも、人間の作った暖炉を利用する前は、

平たい石の間に巣を作っていた。

昆虫は環境の変化に柔軟に適応する。

でも、根本的に変えないこともある。

巣作りの順番や幼虫の餌の蓄え方だ。

 

幼虫のためにクモを狩って蓄え卵を産みつけた小部屋を、

ファーブルさんはわざと壁からこそげとる。

もうそこに、小部屋も卵もないのに、キゴシジカバチは

泥で上塗りをする。

もう一度いちからやり直すことはないのだ。

 

また、小部屋の中の卵を産みつけたクモを、ファーブルさんが

ピンセットで取り出してしまうと、

もう卵はないのに、キゴシジカバチはクモを狩って蓄え続ける。

 

通常の状態で成し遂げられる行為からして、もっとも才能が

あるとわれわれには思われる昆虫でも、実験者が本能の

手順を狂わせると、ほかのものと同じくらい融通がきかない

のである。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」“3 無分別な本能”より)

まったくの無駄だといえることを昆虫が一途にやり続ける。

これを“愚かな本能”とファーブルさんは言う。

 

一方では本能が、その本質においては不変の技術を昆虫に

強制しているが、他方では多少の自由が昆虫にも残されていて、

有利な状況があればそれを利用して、機械的な労働の三要素、

つまり時間と材料と労力の最小の消費でもって、所期の目的に

達するのである。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」

     “6 最小の労力で仕事をする”より)

これは“賢い本能”なのだ。

 

次に紹介されるハチは、ハキリバチ。

ミミズなどが掘った坑道に、切り取った葉を詰めて巣を作る。

丸く切り取った葉を数枚組み合わせてコップ状の小部屋を造り、

花粉と蜜を蓄えて卵を産む。(中略)

ハキリバチの巣作りは借坑型(しゃっこうがた)と呼ばれ、

自分では穴を掘らず既存の坑道などを利用する。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」“7 ハキリバチ”より)

植物の葉に丸く穴があいていたら、虫が食べたのだろうと

思っていたが、このハチが切り取った可能性もあるのだ。

 

もしも労働というものが、人生を陽気に過ごすための最良の

方法であるならば、このハチこそはまさに、たかだか数週間の

その生命を、退屈なぞ感じることなしに過ごしたのに

ちがいない。

私はよろこんでこのハチに、最高の賛辞を、働く者への賛辞を

捧げよう。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上)“7 ハキリバチ”より)

この賛辞はハキリバチだけへの賛辞ではないだろう。

どのハチも、もっと言えばどの昆虫もそれぞれに個性的で

働き者だ。

 

最後はモンハナバチの仲間。

綿紡ぎの名人、オウシュウトモンハナバチと

脂(やに)こね名人、ナナツバモンハナバチ。

綿紡ぎ名人は、植物の茎にある綿のような繊維を集めて

フェルト状にし、小部屋を造る。

脂こね名人は、針葉樹から集めた樹脂を使って、仕切り壁を

造り小部屋とする。

DIYも顔負けです。

f:id:moricchan24:20210924141850p:plain (無料イラストより)

 

最後に、ファーブルさんの記述の魅力を、訳者の奥本氏が

訳注に書かれていたので、引用しておきます。

   ↓

『昆虫記』が古びない理由のひとつに、その記述が昆虫の

観察にとどまらず、観察から得られた疑問や仮説を、実験に

よって解決したり検証したりする過程が克明に描かれている点

があげられる。(中略)あたかも読者自身が実験を行なって

いるような気分にさせてくれるのである。

(「完訳ファーブル昆虫記 第4巻上」

     “6 最小の労力で仕事をする”訳注より)

実験のシーンはドキドキして、がっかりしたり喜んだり。

毎回楽しみなんです💛

 

前巻(第3巻下)では元気のなかったファーブルさんでしたが、

今巻ではすっかり元気になられたみたい。

よかった。