大掃除をせんと。せんとあかんのはわかってる。
夏休み。宿題をせんと。せんとあかんのはわかってる。
あの気持ち。
31日が音を立ててやってくるのも同じ・・・
懲りずに続々編(笑)です。
されていました。
目に見えて衰退してきたローマ帝国のこれからに、大きく影響を
及ぼすキリスト教について、最後にまとめて書いておきます。
キリスト教とローマの宗教との違いについて、
塩野氏は「卑近かもしれないが」と断って、夫婦ゲンカを例にとり
説明している。
〇キリスト教の場合
夫婦のどちらか、または両方でも別々に教会に行き、
懺悔で告白する。それを聞いた司祭から、
「夫婦は神の前で誓った聖なる関係だから、離婚はもちろん
ケンカもしてはいけない」と言って諭される。
そしてお祈りをする。
〇ローマの宗教の場合
ローマには多いときで30万近くの神がいて、それぞれ
神殿や祠がある。
夫婦ゲンカに対応する神は、ヴィリプラカという女神。
ケンカになったとき、夫婦でヴィリプラカを祭る祠に
出向く。
ローマの神殿に神官はいない。そういう聖職者階級がない。
そのため誰もいないところで、一人ずつ神に言い分を訴える。
一度に一人ずつしか言い分は聞いてもらえないとされるので、
もう一方は黙って相手の言い分を聞いて待っているしかない。
夫婦双方くり返しているうちに、相手の言い分の理屈も
わかり、興奮も落ち着いてくる。そのうちケンカはおさまる
というわけ。
おさまらない場合は、「離婚しなさい」という神のお告げ
だそうだ。(ローマでは離婚はOK)
この例でもわかるように、キリストの神は人間に、生きる道を
指し示す神である。一方、ローマの神々は、生きる道を自分で
見つける人間を、かたわらにあって助ける神々である。
絶対神と守護神のちがいとしてもよい。
とてもわかりやすく、おもしろいと思いました。
もっていましたが、ギリシアやエジプトなど多くの異民族の神々を
受け入れてきた多神教の国です。
ローマ人の宗教観とは、個人的には何を信じようと自由だが、
多民族国家であるローマを精神的に統合している「われわれの神々」を
祭るときはそれに参加すること、であったと言ってよい。
イエスが生まれたとされるのが紀元。十字架上で死を迎えたのが
紀元33年前後。
なぜキリスト教は、イエス・キリストの死からコンスタンティヌス大帝
による公認まで、つまり、誕生からはじまって無視できない勢力に
なるまでに、三百年という長い歳月を要したのか。
私が思うのには、ローマが衰退するまでは人々はそれほど強い宗教を
必要としなかったのではないか。
仕事もあり、家族と住む家もある。病気になれば医者に診てもらえ、
困窮すれば福祉政策が機能していた。
それが崩れていくと、人々は何かにすがらなければ生きていけなかった
のかもしれない。
キリスト教会が三世紀のローマ人に与えるのに成功したことは、
多くの人がそれなしには生きることがむずかしい帰属心であった。
人々を苦しめるのは、自分はどこにも属していないという孤独感
なのである。(中略)
キリスト教のコミュニティに加わることで、人間的な温かさを
得られたのだ。誰かが自分のことを、現世でも来世でも、
心配してくれると思えたのであった。
この流れは自然なことだと思う。
また、キリスト教徒の純粋で禁欲的な生き方にも惹かれていった。
しばしば人間は、ある人の考えそのものよりも、その人の行いの
正しさや人格の良さによって、その人の思想にさえも共鳴するように
なる。あれほど人柄が高潔で立派な人が言うのだから、正しいに
ちがいないと思ってしまうのである。
これは一方で危ない思想に引き込まれやすい、人間の急所といえる
部分でもあるかな。
ローマ帝国の知識人も、かつては堂々と現世主義を貫いて、
恥じるところは少しもなかったのだった。(中略)
哲学も芸術も科学も、得意なギリシア人にまかせよう、
われわれローマ人は、現生の生活に必要不可欠なことである
安全保障や法律による政治やインフラの整備や食の保証は、
責任をもって引き受けるから、とでもいう感じで。
(中略)
あの時代のローマ人には、アイデンティティ・クライシスは
存在しなかったのである。
それが三世紀になってすっかり変わってしまった。
一般の人々が直面していたのは、死後や将来への不安よりも
まず先に、知的で生活にも恵まれた人ならば味わうことのない、
現に眼の前にある欠乏と不安であったからである。
恐いことだ。
戦争や災害、そして現在のコロナ感染症のような疫病ー
危機的な状況でいかに自分の冷静な状態を保つか。
キリスト教の勝利の要因は、実はただ単に、ローマ側の
弱体化と疲弊化にあったのである。ローマ帝国は、自分自身
への信頼という、活力を維持するには最も重要な要素である、
気概までも失ってしまったのであった。
気概を失ってしまったローマ人。
どうなってしまうのかー
次巻13巻へ続く。