もりっちゃんのゆるブログ

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「完訳 ファーブル昆虫記 第3巻下」を読みました

寒いです。🍂 ⛄

手袋やマフラーがほしいくらいです。

 

完訳 ファーブル昆虫記 第3巻 下

「完訳 ファーブル昆虫記 第3巻下」(ジャン=アンリ・ファーブル 著/

奥本大三郎 訳)を読みました。

表紙の絵は、ミドリゲンセイ。

あの、例の、ちょっと変わった、過変態のゲンセイです・・・

 

全10巻の上下合わせて20冊の6冊めになります。

ハチ、ハチ、ハチ、ずっとハチ。

今巻もまだハチ。

さすがに飽きてきて貸し出し期限を3回も延長してしまいました💦

 

今巻のトピックは、動物の食性です。

動物の食性は、限られた食物を食べる「単食性」と、

なんでも食べる「多食性」で、それぞれに一長一短がある。

単食性の動物は、食物が豊富で、それが安定して供給される

場合には極めて有利になる。多食性の場合は、食物の

応用範囲が広いが、反面、同じ食物をめぐる競争相手が

多くなる。

(「完訳 ファーブル昆虫記 第3巻下」

    “15章 進化論への一刺し” 訳注より)

例えばコアラ。コアラがユーカリの葉を食べることは知られていますね。

ユーカリにはユーカリ油という消化しにくい成分があり、

他の動物は食べません。

でもコアラは、ユーカリを食べられるように適応していき、

競争相手がいない食料を大量に得られるようになりました。

ただし、ユーカリが何らかの理由で絶滅すると、コアラも

共倒れになるというリスクがあるのです。

 

昆虫(の幼虫)にも、チョウの仲間には単食性が多いです。

キャベツの葉、みかんの葉など特定の植物の葉しか食べず、

それ以外の植物には見向きもしないのです。

今回、ファーブルさんが近所の奥様方に頼まれて、カイコ

(カイコガの幼虫)をクワの葉以外の植物で育てる実験をします。

天候不順でクワの葉がだめになり、養蚕農家の奥様方は困ったのです。

ファーブルさんはクワに種が近い植物をいろいろ考えて与えてみますが、

ことごとく失敗します。

私の名声は、この失敗で若干下落してしまったようである。

私が悪かったのであろうか。いや、絶対にクワの葉しか食べない

カイコのほうが悪いのだ。

(「完訳 ファーブル昆虫記」“14章 食物の変更”より)

ほとんど八つ当たりです(笑)

 

カイコがクワの葉しか食べない仕組みは現在ではわかっていて、

カイコの口の周りに生えているひげや触角が感知器官になっているそうだ。

そのひげや触角を切り取ると、サクラやキャベツの葉を食べるように

なる。

ただし、食べはするけれど、すべて死んでしまう。

クワの葉にあってサクラやキャベツにはない成分があるのか、

サクラやキャベツの有害成分のためかどちらかだ。

クワの葉の成分を分析し、寒天地にその成分をしみ込ませると

カイコはその寒天を食べるようになる。

今ではそれを発展させ、カイコの人工飼料も開発されているそう。

すごいですね。

 

もうひとつのトピックは、ハチが蓄える食料の量について。

ファーブルさんは、ハチの巣を観察していて、

巣に蓄えられている食料(草食のハチは蜜や花粉・肉食の

ハチは他の虫)の量にかなりの差があることに気づきます。

繭の入った巣を観察し、多くの食料が蓄えられている部屋は

広くて、必ず雌が産まれてくる。

少ない(3分の1程度)食料の部屋は狭く、必ず雄が産まれてくる

ことがわかってきます。

今ではハチの卵の産み分けについても詳しくわかってきました。

ハチの雌は、交尾後、精子を体内に蓄える。雌を産む場合、

産卵ごとに卵子を受精させる。受精した卵は雌になり、

未受精の卵は雄になる。つまり、母親バチは、自分の卵を

受精させるかさせないかで、卵の性を決定しているのである。

(「完訳 ファーブル昆虫記 第3巻下」

    “19章 ツツハナバチの産卵” 訳注より)

 

ファーブルさんは今巻の最後に弱気なことを書いています。

愛する昆虫たちよ、お前たちについての研究は、人生の

試練の中で私を支えてくれたし、これからも支え続けて

くれるのであろうが、いまはここで別れを告げねばならない。

私のまわりでは仲間の数もまばらになったし、永いあいだの

希望も消えてしまった。それでもこの私には、お前たちのことを

なおも語り続けることができるであろうか。

(「完訳 ファーブル昆虫記 第3巻下」

    “20章 ツツハナバチの卵”より)

当時のファーブルさんは62歳。前年に妻のマリーを失くしました。

年老いた父の面倒をみることにもなり、追いつめられた状況

だったようです。

でも、この翌年、40歳年下のジョゼフィーヌと再婚するのです。

きっとファーブルさんは元気になるでしょう。