晩夏の長雨🌂
気がつけばあのうるさかった蝉の声が静かになっています。
日中は蒸し暑いですが、朝晩は涼しいくらい。
このまま夏が終わってしまうことはないだろうと思いながら・・・
年々夏の様子が変わってきたと感じます。
「雪の階(きざはし)」(奥泉光 著)を読みました。
奥泉氏の本は「死神の棋譜」、「シューマンの指」に続いて3作目
ですが、図書館で予約したのはこの本が最初でした。
昨年本屋さんで見つけて、タイトルが素敵だなと思ったからです。
予約が多かったので回ってきたのが今になりました。
字が小さい。 長い。(587ページ)
読むのは大変でしたが、今まで読んだ奥泉氏の本では一番
おもしろかったです。
時代は昭和10年。
数えで二十歳の笹宮惟佐子(ささみやいさこ)は、女子学習院に
唯一の友といっていい宇田川寿子(うだがわひさこ)が
突然失踪し、心中遺体で見つかったことから、
幼少時の遊び相手だった牧村千代子に調査を頼む。
徐々にきな臭くなっていくこの時代、時代背景の描写も多いが、
謎解きがベースにあるので負担なく読める。
タイトルの「雪の階」の意味はクライマックス近くで明らかになる。
瓦屋根に雪を厚く載せ、軒から氷柱が垂れ懸かる社の、
拝殿に上がる段の途中にある人らは、まるで雪で造った階に
立つかのようで、それはいかにも脆く、いまにも崩れ落ちそうに
見える。
(「雪の階」“五章”より)
降り積もった雪の風景が、美しさだけでなく、危うさや
この世のものでない夢・幻を感じさせます。
この場面の翌々日が昭和11年2月26日。歴史的な事件が起こります。
大事件の後のラストの場面は、意外にほのぼのしてよかったです。