暖かくなりました。日中は上着がいらないくらいです。
でもまだ夜は寒いですね。寒暖差に気をつけないと。
「とめどなく囁く」(桐野夏生 著)を読みました。
2017年から2018年にかけて新聞に連載された小説で、発行は
2019年です。
桐野夏生氏の作品はいくつか読んでいます。
神奈川県の逗子に近い山を開いて作られた高級住宅地に住む
塩崎早樹(しおざきさき)が主人公。
8年前に海釣りに出かけて行方不明になった夫が死亡認定され、
早樹は妻を病で失った塩崎氏と再婚したのだった。
塩崎氏は早樹より31歳年上の72歳。
社長職を息子に譲り、悠々自適の会長職にある塩崎氏と
経済的にも時間的にも豊かで穏やかな生活を送っていた
早樹に、今頃になって不穏な出来事が起こる。
何が起こるのかドキドキして読み進めたけれど、なんとも
のんびりしているのだ。
少しずつ少しずつ不穏さが増してくるけれど、ドカンと大きな
事件はおきない。じれったく感じるくらいでした。
現実の生活はそうそう大きな事件が起きるわけではなく、
それがかえって現実味がありました。
こういうふうにじわじわと追い込まれていくのかと。
(略)
しかし、庸介(筆者註:早樹の元夫)の母親に、彼に似た人を見かけた
という連絡をもらって以来、私の生活は、一変しました。
耳許で常に、「庸介は生きているかもしれない。さあ、
どうする」という囁きが聞こえるような気がするのです。
そして、その囁きは微妙に変化したのです。
「庸介とはいったいどんな人だったの? あなたは庸介が
好きだったの?」と。
(「とめどなく囁く」(桐野夏生 著)より)
タイトルにある「とめどない囁き」は上に引用した部分に初めて
あらわれます。
この話は「the end(おわり)」ではなく「to be continued(つづく)」の
話だと思いました。
囁きは続くのです。物語は終わっても・・・ひゃあ~~~
本書とはまったく関係がありませんが、
早樹という名前は私にとっては特別な名前です。
漢字はいろいろありますが、「さき」という音(オン)が好きです。
だから主人公の早樹さんにも親近感を覚えました。