もりっちゃんのゆるブログ

楽しく、でも真面目に。 そんなブログを書いています。

「悪人」を読みました

しばらくいいお天気が続いています。

昨日はお出かけしました。次回にでも記事をアップします。

 

今日はたまっている読書の記事を。

悪人

「悪人」(吉田修一 著)を読みました。

「路 (ルウ)」を読んで吉田氏の他の本も読んでみたいと思ったからです。

 

本は2007年発行。朝日新聞に2006年3月から2007年1月まで

連載されました。

映画化された記憶があり調べたら、2011年に映画化されていました。

妻夫木聡深津絵里が主演だったことも覚えていました。

私は観ていませんが、日本アカデミー賞を総なめしたようです。

 

読み始めたときは、宮部みゆきの「模倣犯」に感じが似ているなと

思いました。

これから起こる犯罪(なんとなくこれから起こるとわかる)の

周辺の人物の状況、社会情勢などの説明から始まるところなど。

 

ただこの「悪人」の一番の特徴は、舞台が福岡、佐賀、長崎の

九州北部地域だということ。

登場人物が九州の方言を話し、事件の起きた12月から1月の雪が降る

ような寒さや、港のそばに露店が並ぶ漁村の暮らしが身近に感じとれる。

2人が逃亡を続けるさきざき、呼子の民宿でのシーン、

灯台下に建つ底冷えのする管理小屋での隠遁生活がクライマックスと言える。

 

印象に残ったセリフを挙げておく。

「アンタ、大切な人はおるね?」

 (中略)

「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなって

 くるような人たい」 

 (中略)

「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。

 大切な人がおらん人間は、何でもできると思いこむ。

 自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気に

 なっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。

 だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、

 失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした

 目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」

   (「悪人」(吉田修一 著)より)

 

フェリー乗り場に置き去りにされた5~6歳の祐一(清水祐一:主人公の1人)

に、持っていたちくわを渡したのは、父親に抱かれた佳乃(石橋佳乃:被害者)

ではないかと気づいたとき、ちょっとぞくっとした。

違うかもしれないけれど。深読みし過ぎかもしれないけれど。

この場面は映画ではどうなっていたのだろうか。

 

ひとりひとりは悪人ではない。でもひとりひとりが持っている「悪」の

部分が集まると、巨大な「悪人」が出現するのだ。

その巨大な悪人は、もうひとりひとりでは制御できなくなっている。

そんな気がした。