もりっちゃんのゆるブログ

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「コミさんほのぼの路線バスの旅」を読みました

今日からお盆明けの平日ですが、うちには昨日と変わらず

旦那さんも息子も居ます・・・

夏休みが短くなり、早くも2学期が始まった学校もあるようです。

甲子園の高校野球交流試合も今日で終了。

いつもと違う夏休みが終わろうとしています。 

 

コミさんほのぼの路線バスの旅 単行本

「コミさんほのぼの路線バスの旅」(田中小実昌 著)を読みました。

7/4の毎日新聞の書評欄で紹介された本です。

(紹介されたのは文庫化された中公文庫版。

 私が読んだのは図書館にあった単行本)

 

田中小実昌さんをご存知ですか?

私は若い頃テレビで拝見したことがあります。

この表紙のイラスト通り、お地蔵さんみたな丸いお顔で、

ぽわ~んと抜けた独特の雰囲気がありました。

頭にちっちゃな毛糸の帽子をかぶっておられました。

1925年(大正14年)生まれ。戦地から復員後はさまざまな仕事を

経験されました。(この本にもところどころその経験が出てきます)

直木賞を受賞された作家、翻訳家でした。

2000年に74歳で亡くなられています。

 

コミさんがバス旅がお好きだったとは知りませんでした。

バス旅といえば、太川陽介さんと蛭子能収さんの番組「路線バスの旅」が

最近終了しました。

私はこの番組のファンで、初期から結構見ていましたが、

最近はバス路線が廃止され、路線バスで繋いでいくことが難しく

なってきました。

つながっていない部分は歩くことになり、年々その距離は長くなり・・・

ほぼ全国のバス路線を網羅できたことと、蛭子さんがお年なので

やむなく終了とのことでした。

 

この本でコミさんがバス旅をしたのは、1980年代から90年代で

結構バスが繋がっている。

時間の制限がなければ、コミさんのように、東京から鹿児島まで

路線バスで行けたのだ。

そのつながりざまを楽しむのもおもしろいし、

コミさん独特の風景描写がいい。

少し紹介。

 

小田原から熱海までのバスは、とってもいいバスだった。なにしろ、

このバスは、海のそばをはしる。東海道線の列車や新幹線では、

きれぎれにしか見れない海が、たっぷり、色あざやかに、バスの窓の

下に見える。

ぼくは海を見ると、たとえ東京の晴海埠頭みたいな、つまらない、

きたない海でも、海、海・・・と海とだきしめあっているような

気持になる。

ところが、この海は、海ぜんたいがラムネの水みたいに、うすあおく

透きとおり、波が岩にあたってくだけると、ラムネの泡みたいな

しろい泡がわきだし、それがおさまると、また陽をてりかえす、

うすあおい海の水になる。

 (「東海道中バス栗毛」より)

 

ひらがなの多いやわらかい文体。

それがぽわ~んとしたコミさんの雰囲気とも重なる。

 

昭和の作家、昭和に書かれた作品を読むと、

何気なく戦争について触れられていることが多かったように思う。

それで意識せずに戦争について知ったことも多かった。

戦後の作家がほとんどになり、意識しないと戦争について

知ることは難しくなってきた。

本書にも、ふっとこんな場面が登場する。

ひまわりの花がある。ヨーロッパ北部の広大なひまわり畑をおもいだす。

ひまわりの花が真っ黒に枯れて、それが見わたすかぎりつづき、

まるで、畑が空襲にでもあったみたいだった。

 (「山陽道から火の国へ」より)

 

あまり読まない分野の本でしたが、おもしろく読みました。