もりっちゃんのゆるブログ

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「新装版 切支丹の里」を読みました

昨日、今日は湿度が低くて過ごしやすいです。

うまく日陰を探して歩けばなんとか。

 

切支丹の里 (中公文庫)

「新装版 切支丹の里」(遠藤周作 著)を読みました。

 

紀行文が好きです。

旅行にはそうたびたび行けませんから、自分が知らない土地を訪ねた

文章を読んでどんな所か想像するのが楽しいです。

この本は去年本屋で、中公文庫の旅・紀行文のフェアで選び

買ったものです。

エッセイのような感覚で気楽に読めるかなと思いましたが、

ちょっと違いました。

遠藤氏が小説執筆の取材旅行を兼ねて行った長崎地方への旅を

基にした紀行文と小説の小品が収められています。

 

「沈黙」など遠藤氏にはキリスト教をモチーフにした作品が多いです。

氏自身もクリスチャンでした。

私は無宗教なので宗教や信仰を描いた小説は理解しにくく、

あまり読んでいません。

「沈黙」も未読です。

ただ、遠藤氏は信仰の素晴らしさや神の教えを描きたかったわけでは

ないような気が、この本を読んでしました。

キリスト教が弾圧を受けて、多くの宣教師、神父、信者が殉死した一方で、

棄教し(信仰を捨て)自分を責め自分に落胆しながらその後を生きた

元信者もたくさんいたはず。

そして一部が信仰を捨てきれず、隠れて(潜伏キリシタン世界遺産登録

では記載されていますー2018年)信仰を続けてきました。

そんな信者に遠藤氏は興味を持ち心を寄せています。

 

初版は1974年の古い本です。2016年に新装版として出ました。

今の長崎、天草は、遠藤氏が訪ねた頃とはずいぶん変わっているでしょう。

2018年に世界遺産登録されてからはまた変化したかもしれません。

単に珍しいからとか古いからという歴史や文化の上っ面だけでなく、

人々の営みとして信仰があったということ、

迫害をしたのも殉教したのも潜伏したのも人間だということ、

決して明るい観光地ではないのだという思いで、この地を受け止めないと

いけないと思いました。

 

しかし、昔の拷問はひどいです・・・

ナチスユダヤ人への拷問もひどいもんですが、人間というのは

ここまで恐ろしいことができるのだと震えます。

この拷問のシーンで、私の心はかなり折れたので、

しばらく癒されるような作品を読むことにします。