ご無沙汰になりました<(_ _)>
年賀状も投函し、大掃除をぼちぼち始めていますが、まだ窓ふきが
終わったところ・・・
なんか雨が多いのよね~
山本周五郎の(うーん、故人だと呼び捨てになってしまうのはなぜだろう)
「赤ひげ診療譚」を読みました。
山本周五郎、初めてです。
名前は知っていました。「山本周五郎賞」という文学賞もあります。
「赤ひげ診療譚」はNHKのドラマを見て、読んでみようと思いました。
黒沢監督の映画「赤ひげ」は今でもCMに使われたりして有名ですね。
でも私はこの映画を知らなくて、お話も今回のドラマで知りました。
ドラマでは、赤ひげ先生ー新出去定役を2時間ミステリドラマの帝王
船越英一郎が、
赤ひげ先生のもとで成長していく見習い医師ー保本登を中村蒼クンが
演じていました。
小説は、時代小説ながら古くさくなく、驚くほど読みやすいお話でした。
文体もやわらかく、あっさりしているけれど決して冷たくなく、
読み終わると芯から暖まっている・・・そんな短編集でした。
タイトルからは赤ひげ先生の話かと思いますが、どちらかというと
新米医師の登の成長が描かれています。
赤ひげ先生は登の目を通してこんなふうに登場します。
額の広く禿げあがった、角張った顔つきで、口のまわりから顎へかけてぴっしり髯が生えている。俗に「長命眉毛」といわれる、長くて濃い眉毛の下に、ちから強い眼が光っていた。「へ」の字なりにむすんだ唇と、その眼とは、犬儒派のような皮肉さと同時に、小児のようにあからさまな好奇心があらわれていた。
ーなるほど赤髯だな、と登は思った。
実際には白茶けた灰色なのだが、その逞しい顔つきが、「赤髯」という感じを与えるらしい。年は四十から六十のあいだで、四十代の精悍さと、六十代のおちつきとが少しの不自然さもなく一体になっているようにみえた。
ドラマでも赤ひげ先生のひげは、赤より金色でした。ちょっと異人を思わせました。
舞台は江戸の小石川養生所。貧しい人がほとんど無料で診てもらえる診療所です。
赤ひげ先生をはじめそこで働く医員が寝食忘れて治療をしますが、助かる病人は
多くないのです。
原因は「無知と貧困だ」と赤ひげ先生は言います。
病気を治すのは本人の力がほとんどで、医者はそれを少し助けるだけなのだと。
医学が進んだ今日であっても、根本はそう変わっていないように思えます。
作中、いろいろな病人が登場しますが、死に方を通してその人の生き越し方が
うかがえます。生き方は死に方であり、死に方は生き方なのです。
山本周五郎、好きになりました。
山本周五郎は、本名を清水三十六(しみずさとむ)といい、筆名は尋常小学校
卒業後に徒弟として住み込んだ質店の山本周五郎商店からきている。
店主の山本周五郎さんはやがて作家となった周五郎を応援していたそう。
文豪となった周五郎を、本物の(笑)周五郎さんも喜んだことでしょう。
直木賞を辞退した作家としても周五郎は有名ですが、直木賞以外にも多くの賞を
辞退しています。何か思うところがあったのでしょう。
没後、すぐれた物語性を有する小説・文芸書におくられる「山本周五郎賞」が
創設されました。
結構好きな作家が受賞されています。
山田太一、吉本ばなな、佐々木譲、稲見一良、船戸与一、宮部みゆき、
久世光彦、帚木蓬生、天童荒太、真保裕一、梁石日、重松清、岩井志麻子、
乙川優三郎、吉田修一、京極夏彦、熊谷達也、荻原浩、宇月原晴明、恩田陸、
今野敏、白石一文、貫井徳郎、窪美澄、原田マハ、小野不由美、米澤穂信、
歴代受賞者を挙げてみました。
山本周五郎、作品数が多いので、次に何を読むか迷っています。
それはそれで楽しみです。